大統領選を間近に控えた韓国で、MSCI指数で先進国への編入を目指す制度改革が議論になっている。具体的には、アジア通貨危機以降停止されてきたウォンのオフショア取引再開と空売りの規制撤廃だ。しかし企業統治に不安があり、市場に現状維持の心理が根強いため、編入はもろ刃の剣となりかねない。

ある株価指数にその国が取り上げられるのを妨げている制度上の障害が大統領選挙の争点になる。これは、そうあることではない。しかし韓国は、3月9日の投票日まで1カ月を切ったこの段階で、その重要な例外になろうとしている。
韓国について、MSCI(モルガン・スタンレー・キャピタル・インターナショナル)株価指数における先進国枠*入りが2008年以降3度にわたり検討されてきた。しかし、必要条件を満たすことができなかった。
MSCI指数で先進国と認められれば、世界第10位の経済規模を持つこの国は、過去30年間座り続けてきた新興国という列車の硬い椅子を離れ、クッションの利いた一等車の立派な席に座ることができるようになる。
韓国は、FTSEラッセル、ダウ・ジョーンズ、S&Pといったほかの指数では既に何年も前から先進国の扱いを受けている。しかしそれでは十分ではない。韓国にとっては、MSCI World Indexの対象となることが何より重要な先進国の資格なのだ。先進国として扱われるようになれば企業統治をめぐる要求が高くなる。それが個々の企業にとってはありがたくないことであったとしてもだ。
カギは通貨取引と空売り
MSCI World Indexへの編入がこれまで3度認められなかった際も、韓国は主要な基準のうち2つは満たしていた。先進国の枠に入れなかった主な理由は、韓国が通貨ウォンのオフショア取引を認めなかったことだ。アジア通貨危機で受けた精神的な傷がまだ癒えていなかった1999年に停止された。今も保護的な意味で維持されている。
その他の理由として、空売りの制限や、海外投資家に課す登録手続きの煩雑さなどがある。
韓国では今、MSCI World Indexへの編入を目指す動きが目立つ。与党「共に民主党」の大統領候補である李在明(イ・ジェミョン)氏は、MSCIから格上げの承認を得る試みを公約に掲げて選挙戦を戦っている。最大の対抗馬も、李氏ほど明確ではないものの、同じ結果につながると考えられる規制緩和について語る。
実際、現政権の洪楠基(ホン・ナムギ)経済副首相兼企画財政相も、MSCI World Indexへの編入を妨げてきた通貨と市場アクセスの問題の解消につながる規則改正を昨年12月半ば以降2度にわたり提案した。
韓国取引所の会長は1月下旬に記者会見を開き、空売り制限を撤廃する必要性を強調した。
次のような臆測が以前から一部にあった。韓国はMSCIでの格上げに内心は消極的で、新興国という「小さな池の中の大きな魚」の立場を維持したいのではないか。それゆえ、新たに沸き起こった議論は世界の投資銀行の注目を引いた。投資銀行は、何が大きな取引を生むか直観的に分かるのだ。
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