原油相場が高騰し、シェール企業でも採算が合うレベルに回復した。このため増産を望む声が上がり始めたが、その一方で、これを警戒する投資家も多い。先の相場下落局面で、多くの事業者が資金難に陥ったからだ。今も投資家の顔色をうかがわざるを得ない。

パーミアン盆地は米国有数のシェールオイル生産地だ(写真=AP/アフロ)
パーミアン盆地は米国有数のシェールオイル生産地だ(写真=AP/アフロ)

 原油価格が跳ね上がって1バレル95ドル(約1万1000円)を超えた。米シェール企業の経営陣にとって、新たな石油を求めて掘削装置を始動させたくなる状況だ。ただし、そうした行動に出れば金融市場の怒りを買うリスクを冒すことになる。

 米国のシェール産業はかつて借り入れを元に大規模な開発を進めることで知られた。その行動は、米国を世界最大の産油国たらしめた。ただし、現在は財政規律を広く受け入れている。経営幹部は投資額をキャッシュフローの範囲に収め、多額のコストがかかる案件に資金をつぎ込むことは二度としないと誓っている。

 だが、原油相場が2014年以来の高い水準に回復。この決意は試練にさらされている。米国の産油量が今後どうなるかはシェール企業の対応次第だ。現在は、新型コロナウイルス感染症のパンデミック(世界的大流行)前のピークをはるかに下回るレベルにある。

投資より自社株買い

 「この業界の関係者は皆、『生産量はいつ増えるのか』と心の内で考えている。投資家の中には『けしからん。今増産しないでいつするのだ』と声を上げる人もいる」。米デボン・エナジーのリック・マンクリフCEO(最高経営責任者)はインタビューの席でこう語った。

 「だが増産に踏み切れば、その2倍とは言わないまでも、同程度の数の投資家から『やはり規律など守れないではないか』と非難されるだろう。我々はこれまでの失敗から学び、こうした反応があることを理解している」(同氏)。同氏が率いるデボンはオクラホマシティーを拠点とする、米シェール業界屈指の生産業者だ。

 米パイオニア・ナチュラル・リソーシズやEOGリソーシズ、ダイヤモンドバック・エナジー、デボンなど上場する独立系大手はいずれも設備投資を抑制すると公言している。この4社の生産量は、合わせておよそ日量140万バレルとなる。

 ダイヤモンドバックのトラビス・スタイスCEOは1月に開かれた業界の集まりで「これまでなら会社の成長のために投じたであろう資金を現在は自社株買いに回している」と語った。

 パイオニアCEOのスコット・シェフィールド氏は、生産量の伸び率を今年は年間5%に抑えると明言した。パンデミック前に記録した猛烈な成長率をかなり下回るペースだ。

 業界大手によるこうした約束を投資家らは歓迎している。

 デボンはS&P500種指数採用銘柄の21年のベストパフォーマー(株価上昇率トップ)となった。その一助となったのは業績に応じて変動する配当金と自社株買い(同年11月に発表)だった。エネルギー企業は昨年、総じてS&P500の伸びを大きく上回った(元の価格が低かったせいもあるが)。

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