米ニューヨーク・タイムズ(NYT)が、インターネット上で流行している単語当てゲームのワードルを買収した。新聞内にあるゲームや料理といった娯楽コンテンツは、昔からニュースよりも購読者を引きつける側面があった。NYTはワードルをゆくゆくは有料化したいと考えているようだが、ファンたちは有料化されないことを願っている。

<span class="fontBold">ワードルは21年10月に誕生し、瞬く間に人気となった単語当てゲームだ</span>(写真=Brandon Bell /Getty Images)
ワードルは21年10月に誕生し、瞬く間に人気となった単語当てゲームだ(写真=Brandon Bell /Getty Images)

 1月31日、米ニューヨーク・タイムズ(NYT)は単語当てゲームの「Wordle(ワードル)」を買収した。買収価格は「7桁台前半(100万~500万ドル)」にまで達したが、多くの人々はこの金額をお買い得だと感じている。このことからも、5文字の単語当てゲームにどれだけ夢中になっている人が多いかが分かるだろう。

 何百万人もの人(かくいう筆者もその一人だ)が毎朝、問題への挑戦を楽しみにしているのであれば、それがどのようなものであれ、極めて貴重な資産と言うことができる。

 NYTは自社の使命と存在意義を非常に重く捉えており、2027年までに1500万人の購読者を獲得する目標を新たに打ち出したばかりだ。「我々は真実を追求し、人々が世界を理解する手助けをする」と、同社は高らかに宣言する。スマートフォンで遊べ、結果をツイッターに投稿して体験を共有できるワードルは、そんな新聞社のふさわしい買収相手には見えないかもしれない。

 しかしながら、顧客は必ずしも1面に載っているニュースを読みたくて購読料を払っているわけではない。大勢の顧客にとって、お目当てはオンラインパズルや料理のレシピなのだ。料理およびゲームを目的にNYTを購読する人の数は今や200万人を超えており、同社の急成長に大いに貢献している。その勢いは、政治や経済といった一般的なニュースを目当てに購読を続けている読者の増加ペースを上回っている。新聞のジャーナリストたちは、読者の多くが自分たちの記事よりも毎日のクロスワードパズルに関心を持つ現実をよく分かっているようだ。

 インターネットの登場によって印刷広告が姿を消し、多くの新聞社ではニュース面とオピニオン面、ゲームといったコンテンツを広告とセットにして提供するこれまでのスタイルを維持するのが難しくなっている。だがNYTはこのやり方をオンラインで復活させた。クロスワードパズルが初めてNYTの紙面に登場したのは1942年にまで遡るが、その後2014年には電子版の有料読者向けのデジタルコンテンツになっている。

 画面にちょうどはまるサイズの「ミニクロスワード」は、スマホと極めて相性が良いコンテンツだ。昨年、購読者がミニクロスワードに取り組んだ回数は2億4500万回に達した。ワードルの開発者、ジョシュ・ワードル氏は自身のゲームのデザインを考えるに当たり、このミニクロスワードをヒントにしたという。

「料理レシピ」目的の購読者も

 家庭料理もNYTの人気コンテンツの一つだ。同社は1850年代に初めて料理レシピを紙面に載せた。ある読者は、1967年に紹介された子牛料理のレシピを今でも繰り返し活用しているという。「まだ当時の新聞から切り抜いたレシピをそのまま使っているの。今では黄ばんでボロボロになり、セロハンテープで継ぎはぎだらけになってしまったけど。私たちの結婚生活がうまくいっているのも、このディナーのレシピのおかげだわ」と彼女はうれしそうに話す。

 こうした例からも、同社の料理サイトが大勢の読者を引きつけ、年間40ドルの購読料を払う動機につながっていると考えるのは何ら不思議ではない。同サイトのデータベースには2万1000種類のレシピが収載されており、2021年だけで新たに700のレシピが追加された。昨年ナンバーワンになったレシピは「昔ながらのビーフシチュー」で、560万回も閲覧された。このレシピはモリー・オニール氏が1994年に発表したものだ。オニール氏は2019年に亡くなったが、彼女のレシピは生き続けている。