全米トラック協会(ATA)を率いるクリス・スピアー氏は1月半ば、トラック輸送部門(雇用者総数は約300万人)が現在8万人強の人員不足に陥っていると述べた。新型コロナ禍で人々がなかなか仕事に復帰できない現実を反映している面がある。だが同氏はこの数字が今後数年間で倍増するとみる。

 一見すると奇妙に思えるかもしれない。数年前、評論家たちはトラック運転手の仕事がロボットに取って代わられると予測していた。

 しかし現実には、全面的な自動化はまだ起きそうにない。政治的な反対と規制が背景にある。有権者と政治家は運転ロボットを脅威に感じている。一方、若者はこの仕事を敬遠しているようだ。現役トラック運転手は5人中4人が45歳を超えている。

 若者が尻込みするのは前述のロボット論争のせいかもしれない。しかしながら、この傾向を説明する実質的な(そして短期的な)理由が存在する。トラック運転手は、理論上は1年に約10万ドル(約1140万円)を稼ぐことができる。ブルーカラー職としては高い金額だ。だがこの職に就くには州の認可が必要で、取得に多くの資金と時間を要する。

認可の簡素化図るが

 しかも最近は運転手の大半が個人事業主として業務を請け負っている。米政府が21年12月に発表した報告書によれば「ガソリン代や保険料、維持費を自ら負担するため、報酬の手取り金額が減っている」。それゆえ、この仕事は平常時であっても不安定だ。特に「長距離トラックの運転手は1就業日当たり最大11時間の運転が許されているにもかかわらず、平均6.5時間しか運転していない」。荷待ちなどの待機時間に対して賃金は支払われない。

 パンデミックの間、健康リスクや予測不能なサプライチェーンの遅延のため状況はさらに悪化した。その結果、建設業など他のブルーカラー職の魅力が徐々に増しているようだ。トラック運転手のオマール・アルバレス氏が最近の意見投稿で主張したように、「本当に足りていないのは良好な仕事だ。組合に守られており、適正な補償を得られる。我々が当然受けるべき敬意と尊厳をもって処遇される仕事である」

 この問題に解決策はあるだろうか。

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日経ビジネス2022年2月14日号 94~95ページより目次

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