アフリカのマリから撤退するフランス軍に代わり、ロシアがマリ政府に取り入り傭兵を派遣、勢力を拡大させている。欧米諸国に反感を持つ指導者を味方に付けて影響力を強めるとともに、金鉱山等の利権をも獲得する算段だ。サブサハラ地域でも同様の動きを見せるも、イスラム過激派には手を焼いており、「進出」は一筋縄ではない。

<span class="fontBold">フランスは、2013年以降続けてきたマリへの軍事介入政策を転換しようとしている</span>(写真=QUIDU Noel/Getty Images)
フランスは、2013年以降続けてきたマリへの軍事介入政策を転換しようとしている(写真=QUIDU Noel/Getty Images)

 2021年12月14日、フランス軍部隊は西アフリカ・マリのトンブクトゥにある軍事基地の管制権をマリ軍に引き渡した。引き渡しを記念して、フランス軍大佐が木製の鍵をマリ軍に手渡すセレモニーも行われた。

 13年にフランスがジハード(聖戦)主義組織や分離主義者に対抗するために軍隊を派遣して以降、キャンプ地にはためいていたフランスの三色旗は、この日からマリ国旗に代わることとなった。

 フランス軍はこの地域に派遣していた5100人のテロ対策部隊を約半分に減らし、今後はマリ、ニジェール、ブルキナファソ一帯で勢力を強める過激派と戦う現地軍の訓練支援に回る予定だ。その節目となったのが今回の撤収だった。

 だが、フランス部隊が去るやいなや、マリにはロシアの傭兵(ようへい)が進出してきたという。

 あるフランス軍当局者の話によれば、その部隊は450人強で、構成員のほとんどがロシアの民間軍事会社ワグナーが雇った傭兵だという。同社は、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領と親しい関係にあるエフゲニー・プリゴジン氏が設立したものだ。一部報道によれば、マリ政府は月に1000万ドル(約11億円)規模の資金をワグナーに支払い、傭兵派遣契約を結んでいるという。資金の大半は、マリの金鉱山から産出された金取引で得たものとみられる。

 マリ政府は傭兵が派遣された事実を認めていない。ロシアからの部隊を過激派と戦う傭兵ではなく、ロシア政府から派遣された訓練教官だと主張する。だが、マリのあちこちでは武装したロシア人兵が目撃されている。最近ではジハード主義組織との戦闘も発生しており、傭兵の1人が死亡、2人が負傷する出来事があった。

次ページ 軍事的な空白地帯に「進出」