インドをこの夏、熱波が襲った。気温は連日40度を超えた。気候変動がその一因だ。エアコンの普及はインド経済のみならず人々の健康を守るのに欠かせない。だが、エアコンは電力を大量消費するため温暖化を加速させる。このジレンマの解消が不可欠だ。

 失われた命。溶けた舗装道路。そして停電。これらはみな、この夏にインド周辺を襲った熱波がもたらしたものだ。その猛烈さは例年以上で、気温は連日40度を超えた。インドに隣接するパキスタンの都市ジャコババードでも、人体に備わる機能では体温が調節できないほどの高温になった。

<span class="fontBold">インドでは気温が40度を超える日が続いた</span>(写真=AFP/アフロ)
インドでは気温が40度を超える日が続いた(写真=AFP/アフロ)

 気温が上がれば、人は涼しく過ごすための手段を求める。国際エネルギー機関(IEA)によると、世界のエアコン販売に占めるインドの割合は今後数十年間のうちに3分の1に達するとみられている。

 南アジアの猛暑にさらされる10億超の人々にとって、冷房設備の確保は、経済的・社会的発展のみならず健康にとっても不可欠な措置だ。

 だが、電力を大量に消費し温室効果ガスを排出するエアコンの普及は地球温暖化を加速する危険をはらむ。このためインド当局と研究者たちは、エネルギー効率がより高い手段で国内の冷房需要を満たすべく、企業や消費者との協力を急いでいる。

 その手段はさまざまだ。環境への影響が少ない冷媒ガスを選ぶことや、よりクリーンな技術をより手ごろな価格で提供することなどが考えられる。

食品の3分の1は暑さで腐敗

 米環境保護団体、天然資源保護協会(NRDC)でコンサルタントとして働くプリマ・マダン氏は「気候変動が熱波をより長期かつ深刻なものにしている」と指摘する。

 「エアコンの導入が必要だ。ここで重要なのは、エアコンの需要が高まれば気候変動がより進むことである。エネルギー効率の悪い技術で対応すれば、公害を拡大し、公衆衛生にも悪影響が及ぶ」(同氏)

 NRDCによるとインドの10世帯中9世帯はエアコンを持たない。比較的普及しているのは扇風機と気化式の冷却器だ。低所得層の家庭がエアコンを使うことができれば、睡眠の質や生産性、健康の劇的な向上が期待できる。

<span class="fontBold">インドでは扇風機が主たる空調手段になっている</span>(写真=AFP/アフロ)
インドでは扇風機が主たる空調手段になっている(写真=AFP/アフロ)

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