トルコのエルドアン大統領が政策金利を引き下げ続けている。同大統領はこれを「独立をかけた経済戦争」と呼ぶ。ただし、これは経済学のセオリーに反する政策だ。代償を支払わねばならないのは一般の国民である。利下げは通貨安を引き起こし、物価を高騰させている。

<span class="fontBold">リラ相場は急落した</span>(写真=AFP/アフロ)
リラ相場は急落した(写真=AFP/アフロ)

 月末、エマーさんが食卓に載せることができるのは具の入っていないパスタだけだ。空腹のまま眠りにつく夜もある。

 「アンチョビを買うお金もないんです」

 彼女は看護師として働いていたが今は引退している。トルコ最大の都市イスタンブールのマルテペにある青果市場の外でこう語った。ここは中間層が多く暮らす地域だ。

 彼女と2人の息子は月額3000リラ(約2万7000円)の年金でどうにか暮らさなければならない。ガス料金と電気料金は滞納中。ローンの返済も滞っている。

 エマーさんが特別なのではない。物価の高騰と通貨リラの急落で、トルコに暮らす人々の貯蓄と所得はその価値を奪われている。

 トルコが直面する危機的状況は制御不能になりつつある。直近の経済の混乱は、レジェップ・タイップ・エルドアン大統領が最近の政策金利引き下げを擁護したのを機に始まった。同大統領は同時に新たな追加利下げを予測。さらに、経済成長を促進すべくリラ安を追求すると示唆した。

 エルドアン大統領は11月22日、「競争力のある為替レートを設定することで、投資や生産、雇用を拡大できる」と発言した。翌日、同大統領の狙いは成就した。この発言に慌てた投資家たちがリラの投げ売りを始めたのだ。リラの対ドルレートは数時間のうちに前日比で15%下落した。翌日には多少回復したものの、過去数年間で最悪の下落幅を記録した。

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