10月の米CPIが31年ぶりの高水準を付けるなど、以前から指摘されていたインフレの動きが加速している。だがFRBは「インフレは一過性のもの」とするスタンスをいまだに崩しておらず、インフレ沈静化に向け動こうとしない。金融政策面での対応が遅れれば遅れるほど、インフレの終息は困難となり、景気後退に陥るリスクが高まる。

<span class="fontBold">FRBはインフレを抑えるために、もっと積極的に動くべきだろう</span>(写真=AFP/アフロ)
FRBはインフレを抑えるために、もっと積極的に動くべきだろう(写真=AFP/アフロ)

 このところ注目を浴びている、インフレを示す指標がまたもや上振れした。インフレ率の押し上げ要因も日を追うごとに増えている。こうした動きに最も影響を受けるのは、所得の少ない、社会の最下層にいる人たちだ。

 足元で起こっているインフレ率の高騰を「一過性のものにすぎない」とこの1年間ずっと言い続けてきた金融当局者たちは、一貫して矛盾するデータが存在するにもかかわらず、いまだに自分たちの信念を見直すことを、ためらっているように見える。

 こうした姿勢は、インフレを適切に認識していなかったり、インフレが発生していないとする情報ばかりを集めていたり、金融政策の失敗に伴い面目が潰れることを恐れていたりする様子からもうかがえる。従って、彼らがインフレ見通しの修正に二の足を踏むのは、特段意外とは思えない。

 だが、インフレ率の上昇は一時的なものだという見方に反するデータは何度も出ている。いつまでも従来の考え方に固執すれば、避けられたはずのダメージも避けられなくなってしまうだろう。経済活動や金融システム、社会情勢にダメージを与えるリスクが大幅に上昇してしまう。

 11月10日に発表された10月の米消費者物価指数(CPI)は、9月と比べると0.9%上昇となり、予測中央値の0.6%を大幅に上回った。前年同月比でも6.2%上昇と、こちらも事前予想の5.9%を上回って31年ぶりの高水準を付けた。

賃上げ、値上げも活発化

 今後も数カ月にわたり、CPIは高水準で推移する可能性が高い。すでに今後の物価上昇を裏付けるデータがいくつも発表されている。例えば11月8日の週だけでも、中国と米国の生産者物価指数が対前年同月比でそれぞれ13.5%、8.6%と大幅な上昇を記録した。

 賃金上昇率も加速している。企業決算では、多くの企業が物価上昇は来年まで続くとの見通しを発表している。サプライチェーンの混乱、トラック不足、コンテナ取扱量増加に伴う港湾の混雑、運賃高騰による物流コストの上昇、労働者不足など、物価上昇を示す材料は枚挙にいとまがない。

 この数カ月間、途切れることなく物価上昇が続いていることを考えれば、人々や企業の行動が変化していても何らおかしくはない。労働者の賃上げ要求は、多くの業界に広がっているし、経営者はストライキの脅威を感じ始めている。旺盛な需要の高まりを受け、企業は安心して製品価格の引き上げに動くことができるようになっている。インフレを懸念し、消費者が商品の購入を前倒しする動きも見られ始めている。

 予想以上に高いインフレ率が続き、さらなる値上げが予定され、個人や企業の行動すら変わり始めているにもかかわらず、米連邦準備理事会(FRB)では、インフレ率上昇を警戒感を持って受け止める動きが極めて鈍い。その結果、金融政策は実体経済に即した対応になっていない。 

続きを読む 2/2 深刻な景気後退のシナリオも

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