COP26が開催され、気候変動が人々の耳目を集める。脱炭素が注目されるが、水の問題も忘れてはならない。アフリカでは、水不足がイスラム過激派を活発化させ、難民を増加させかねない。東南アジア諸国では、真水の不足に海面上昇が追い打ちをかける。

<span class="fontBold">東南アジアで海面の上昇が深刻化している</span>(写真=ロイター/アフロ)
東南アジアで海面の上昇が深刻化している(写真=ロイター/アフロ)

 「私たちが水の管理方法を変えない限り、21世紀の戦争は水を巡るものになる」

 世界銀行のイスマイル・セラゲルディン副総裁(当時)は2009年にこう警告した。

 明らかに水を原因とする戦争は、この世界にまだ起きていない。だが、紛争と水供給との間に関連があるとの懸念は払拭されていない。どちらかといえば、そうした危惧は深刻さを増している。

 この問題の根本原因は単純だ。世界の人口が増加するにしたがって水への需要が拡大している。その一方で、真水の供給量は激減しつつある。気候変動と経済発展が原因だ。

 『Water, Peace, and War』の著者、ブラーマ・チェラニー氏は次のように記している。「真水は徐々に不足してきており、世界人口の3分の2近くが水ストレスのある環境で生活している」

 最も過酷な水ストレスにさらされているのは、人口が最速ペースで増加する地域の一部だ。例えばアフリカのチャド。1970年に360万人だった人口が現在は1640万人に増えた。この同じ期間に、同国とナイジェリア、ニジェール、カメルーンの境界に位置するチャド湖の水はほとんど干上がってしまった。

水不足が招く過激派の台頭

 その結果、真水の供給をチャド湖に頼っていた3000万人の人々が壊滅的な影響を受けている。農家は生活の糧を失った。

 この地域の水不足の悪化とイスラム過激派「ボコ・ハラム」の台頭には直接の関連がある、と多くのアナリストが指摘する。ボコ・ハラムはナイジェリア北部の大半およびその周辺地域を恐怖に陥れてきた。

 アフリカのサハラ砂漠の南部に位置するサヘル地域の情勢不安(その大部分は砂漠化に起因する)は今日、安全保障上の悩みの種となっており、その影響は遠く欧州に及ぶ。フランスは2013年以来、この地域のイスラム過激派と戦争を続けており、思わしい成果を上げられずにいる。

 フランスなど欧州諸国が警戒するのは、この地方で国家が機能不全に陥ったり、テロリストが活動を拡大したりすることで、さらなる波及効果が欧州に広がることだ。サヘル地域の人々が「暮らしが一層困難になる」と判断すれば、北上して欧州を目指す人がさらに増えるだろう。

 アフリカや中東から欧州に流れ込む不法移民の問題はフランス、イタリア、スペインの極右勢力がやり玉に挙げる格好の材料になっている。

 水不足に関する不安はアフリカ大陸全体に広がる。エジプトとエチオピアの間では紛争に発展しかねない火種となっている。両国ともに人口は1億人を超え、水の供給に不安を募らせる。