中国の華為技術(ファーウェイ)は米国から制裁を受ける中、新たな事業分野に取り組み続けている。だが巨大企業のまま新分野に進出するより、解体して優秀な技術者を業界に分散させるほうがよい。それにより中国の創造的破壊が促され、半導体分野での中国の野心を実現に近づけるはずだ。

<span class="fontBold">米政府による制裁に耐えるのは難しい</span>(写真=ロイター/アフロ)
米政府による制裁に耐えるのは難しい(写真=ロイター/アフロ)

 米中関係悪化の象徴となった中国通信機器大手の華為技術(ファーウェイ)は、ビジネススクールがケーススタディーで取り上げる対象として申し分のない存在だ。

 わずか1年数カ月前、中国南部の新興都市・深圳に拠点を置く同社は、通信インフラの分野で競合するフィンランドのノキアとスウェーデンのエリクソンを抑え、世界のトップに立っていた。同社はさらに、携帯電話の販売でも韓国のサムスン電子に取って代わり世界第1位となった。

 優れたケーススタディーとなる企業はどこもそうだが、同社にも強烈な個性を持つ人物がいる。創業者の任正非氏は元軍人で、士官兼技術者として働いていた。その娘の孟晩舟氏は、今回の米中「技術冷戦」における初めての「捕虜交換」劇で主役を務め、自由の身になったばかりだ。

 ファーウェイは画期的な企業だ。世界の目に映る母国のイメージを、まがい物を作る国から目覚ましいイノベーションの国へと変える役割を果たした。1980年代の日本のソニーと同様だ。

 しかも、その将来には危機が迫っているようだ。米国の法執行機関による締め付けが厳しく、スマートフォン向け5Gチップなど最先端の技術を利用できなくなっている。

新規事業への転換に自信

 問題は、ファーウェイがこれからどうすべきかだ。米国の制裁を耐え抜き、将来に期待をかけるのか。例えば同社の張建崗(ビクター・チャン)国際副社長は、研究開発に巨額の資金を投じ、将来の方向性を決める一連の新事業の「地盤を育んできた」と語る。2020年の研究開発予算は218億ドルに上った。

 それとも、同社を黙って分割し、抱えている10万5000人の技術者集団を業界に散らして、新しいベンチャーを一斉に起業させるような種をまくべきなのか。

 つまり、1つの巨大な花であり続けるべきか、それとも、何百もの小さな花を咲かせるべきか、という選択だ。

 ファーウェイは前者を選択すると考えていいだろう。詰まるところ同社は、強固な自信に裏打ちされた、従業員所有の企業なのだ。不屈の企業文化を持っている。同社の営業社員は取引を進める際に相手を酔いつぶすことで知られる。

 また同社は、技術の世界で中国を一層自立させるという習近平(シー・ジンピン)国家主席が抱く使命を、国家レベルで支援する存在になるかもしれない。中国政府は、米国の圧力により弱体化する道を選びはしないだろう。

 しかし、米国の制裁を耐え抜く道は困難に満ちている。米政府は19年、ファーウェイの5G製品を国家安全保障に対する脅威と位置づけた。翌年には、米国製の製造装置で作られた半導体を同社に供給することを制限している。その結果、20年に同社の売上高の半分以上を占めていたスマホ事業は大打撃を被った。

続きを読む 2/3 解体して種をまけば

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