英政府がCOP26を目前にして、「(CO2)ネットゼロ戦略」を発表した。さまざまな投資案件が並ぶ。他方、同国の財務省は、脱化石燃料がGDPの1.5%に相当する税の空白を招く、と警鐘を鳴らす。「CO2ネットゼロ社会を実現するためのコストを誰が支払うのか」は今後、熱い議論を呼びそうだ。

<span class="fontBold">ジョンソン英首相はCOP26が「人類にとっての転機になる」という</span>(写真=代表撮影/ロイター/アフロ)
ジョンソン英首相はCOP26が「人類にとっての転機になる」という(写真=代表撮影/ロイター/アフロ)

 英政府は、英国の家庭と企業が今後数年のうちに新たな税を負担することになるかもしれないと警告した。2050年までに二酸化炭素(CO2)排出量を実質ゼロにするとの目標を達成するためのコストを賄うためだ。

 英財務省が10月19日に発表した文書「Net Zero Review」は、気候変動の緩和に向けて世界が取る行動が「英国の長期的成長にとって不可欠」とする。同時に、化石燃料からの脱却は、燃料税や車両使用税の収入を枯渇させると強調する。これらの昨年の税収は370億ポンドに上った。

<span class="fontBold">電気自動車の充電施設が増える</span>(写真=AFP/アフロ)
電気自動車の充電施設が増える(写真=AFP/アフロ)

 電気自動車への移行により、40年代までGDP(国内総生産)の1.5%に相当する税の空白が一時的に生じる。炭素税の収入を充ててもその全てを埋め合わせることはできない。つまり、歳入を得るための新たな方策が必要となる。

 財務省の文書は「(税の空白が生じるのは)公共投資が必要になるから。ただし、最も大きな原因は、化石燃料に関連する税収が減少することだ」と説明する。「追加の公共支出をするならば、政府は現在の税制を見直すとともに、移行期間を通じて有効な新たな財源を検討する必要があるかもしれない」という。

 コストを賄うもう一つの選択肢である国債の発行については、将来の世代にツケを残すため公正でないという。財政的にも持続が不可能だとみる。

 加えて、一部の産業が英国を離れ、気候変動への対応策が比較的緩い国に移る可能性についても警告した。

英首相がネットゼロ戦略

 電気自動車への転換により失われる税収を補うため、政府は道路利用料金制を導入しなければならない。専門家の多くはこう考える。だが財務省の文書はこれには触れていない。

 首相官邸で補佐官をした経験を持つマッツ・パーソン氏は「CO2ネットゼロ社会実現のためのコストを誰が支払うのか。このテーマは今後10年間、政府や企業の取締役会が行う議論で中心を占める政策課題の一つとなるだろう」と指摘する。同氏は現在、米コンサルティング会社EYのパートナーを務める。

 英国の気候変動委員会は以前、同国がCO2実質ゼロを実現するため30年の間に1兆4000億ポンドの投資が必要となると提言した。同時に、この投資は1兆ポンド近い節約につながるとも指摘した。

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