AIを用いた顔認証技術に強みを持つ中国センスタイムの海外事業が、西側諸国の制裁などで行き詰まっている。スパイ活動や監視に転用されるとの懸念が強く、センスタイムは中国政府向け事業に注力せざるを得ない状況だ。中国のIT企業がAI機能を外注せずに内製化しようとしている点も、同社の政府依存を強める要因となっている。

<span class="fontBold">上海漕河涇ハイテクパークにあるセンスタイムのオフィス</span>(写真=ユニフォトプレス)
上海漕河涇ハイテクパークにあるセンスタイムのオフィス(写真=ユニフォトプレス)

 3年前、商湯科技(センスタイム)の創業者、湯暁鴎氏は米マサチューセッツ工科大学で講演した際、次のような冗談を言って聴衆を沸かせた。「人工知能(AI)といってすぐに思い浮かぶ会社は、米グーグルではなく中国のセンスタイムだ」

 中国政府はAI分野で世界をリードするとの目標を掲げている。センスタイムは、こうした政府の期待を最も背負っている企業の一つだ。年末にも香港市場に上場するといわれており、新規株式公開(IPO)の準備に追われている。その調達額は20億ドル(約2200億円)に上る見通しだ。

 画像認識技術、中でも顔認証技術に強みがあることで知られているセンスタイムは、これまで30億ドル(約3300億円)超の資金調達に成功してきた。曠視科技(メグビー・テクノロジー)、依図科技(イートゥー・テクノロジー)、雲従科技(クラウドウォーク)と並び、中国の4大AI大手の一角を担う。同社に投資する企業には日本のソフトバンクグループ、中国IT(情報技術)大手のアリババ集団、米投資ファンドのタイガー・グローバルやシルバー・レイクなどが名を連ねる。

 大手AI4社はすべて、中国政府の支援を受けて急成長を遂げた。政府の支援を受けることで、中国国民のさまざまなデータの収集・処理が可能となったことが成長の原動力につながっている。各社は現在、海外市場への進出を視野に株式上場を目指している。だが同時に、彼らはその技術の扱い方に関し問題や懸念を示されている。中国西部の新疆ウイグル自治区における人権侵害に加担しているのではないかと疑いを持たれており、米国から経済制裁を科されている状態だ。4社はいずれも「非難には根拠がない」と反論しているが、ビジネスには影響が出ている。

続きを読む 2/2 制裁後、政府への依存高まる

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