英国と欧州大陸で天然ガス価格が高騰している。これは電力料金にも負の影響を与える。風力発電を拡大し、石油火力発電を減らしてきた英国は中でも大きな打撃を被る。専門家は、環境活動家らが天然ガスを悪者視するのは間違いだと主張する。

<span class="fontBold">ロシアと欧州をつなぐパイプラインの一部</span>(写真=アフロ)
ロシアと欧州をつなぐパイプラインの一部(写真=アフロ)

 英国と欧州大陸で天然ガス価格が高騰し記録的な値をつけている。冬を迎える前から供給が絞られているからだ。産業への深刻な打撃や気候に起因する供給不足への懸念が高まる。

 英国における天然ガス価格は9月某日、前日比7%上昇し、1サーム当たり1.65ポンド(約250円)を超えた。年初に比べると3倍近い水準で、8月初めと比較しても70%増となった。天然ガスは発電に多用されるため、電力料金も記録的な額に達している。

 冬の暖房需要が本格化する前であるにもかかわらず天然ガスの供給が不足する原因は何なのか。この事態は家計にどう影響するだろうか。

何が供給不安をあおっているのか

 供給不足に対する懸念が頭をもたげたのは昨冬のこと。厳しい寒さが長びき、天然ガスの在庫を枯渇させた。冬に生じた不足分は通常、暖房用ガスの需要が減る夏の間に補充される。

 だが2021年の在庫は、取引業者が望むペースで回復してはいない。ロシアが欧州に供給する天然ガスの量を絞っている。その理由として、業界で激しい論争の的となっている複数の事柄が挙げられる。

 一つは、ロシアも自国の不足分を補充する必要があること。また、ロシアが欧州諸国の政府に圧力をかけようとしていることが疑われている。例えばドイツに対して、ガスパイプライン「ノルドストリーム2」操業の承認を迫るためだと考えられる。このパイプラインは操業を巡って物議をかもしている。

石炭への切り替えは困難

 欧州は近年、石炭火力発電所の廃止を徐々に進めており、天然ガスの価格が高騰した場合に、燃料を石炭に切り替えることで対処する能力が小さくなっている。カーボンプライスが記録的な高さとなっていることも、石炭への切り替えで得られるメリットを奪っている。石炭を燃やす方が二酸化炭素(CO2)の排出量が多くなるからだ。

 英国および欧州大陸の一部は風力発電への依存度を高めてきた。ここ数週間の天気は、風力発電の貢献を妨げている。その不足分の大半を天然ガス発電で埋め合わせているため、天然ガスの需要が増加している。

 米情報配信会社S&Pグローバル・プラッツのジェームズ・ハックステップ氏は「電力市場が、ガス価格の上昇に影響される度合いが高まっている」と指摘する。

続きを読む 2/2 代金を支払うのは誰か

この記事は会員登録で続きをご覧いただけます

残り1438文字 / 全文3782文字

日経ビジネス電子版有料会員になると…

特集、人気コラムなどすべてのコンテンツが読み放題

ウェビナー【日経ビジネスLIVE】にも参加し放題

日経ビジネス最新号、10年分のバックナンバーが読み放題

この記事はシリーズ「世界鳥瞰」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。