カーボンニュートラルを実現すべく、多くの国が電気自動車へのシフトを進める。だが、十分な量の充電装置を確保できるだろうか。英国では地方当局が整備に乗り出した。英BPなどの企業も拡充支援に動く。これは「充電の一等地」をいち早く確保する競争の始まりでもある。

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モーターショーでも充電が取り上げられた(写真=森田直樹/アフロ)

 スコットランドを流れるテイ川のほとりにV&A(ビクトリア&アルバート)ダンディー美術館は建っている。その東側の遊歩道を、ベビーカーに子供を乗せた2人の女性がそぞろ歩きしている。遊歩道にはEV(電気自動車)用の充電装置が列を成しているが、女性たちはその存在にほとんど気付くことがない。他の歩行者に道を教えるため時折立ち止まったりするだけだ。

 かさ高い充電装置が路上に設置されているのを見かけることがある。これには通行の邪魔だとの不満が頻繁に寄せられる。だがテイ川の遊歩道に設置されているポップアップ充電装置は、アプリを使って起動した時だけ「飛び出す」仕組みだ。

 「充電装置の上を人が通っても、気付かないことが多い」。ダンディー市議会でコーポレートフリートマネジャーを務めるフレイザー・クライトン氏はこう語る。同市はスコットランド第4の都市。市の全域に26台の格納式EV充電装置を設置してテストする380万ポンド(約5億7000万円)のプロジェクトに取り組んでいる。

 これとは別に、イングランド南西部の港湾都市プリマスに10月、28台の充電装置が設置される予定である。

 英政府は、ガソリン車やディーゼル車の新車販売を2030年に禁止する。代わって登場するEVの量に見合う十分な充電施設を用意できるかどうかが、国会議員や政策当局者の重大な懸念となっている。

 英国で運輸行政を担当したレイチェル・マクリーン国会議員は9月9日、EV用充電ポイントをすべての新築家屋に設けるよう義務付ける法律を年内に制定すると明らかにした。だがEVの専門家は、自前の充電ポイントを設置する場所(私道など)がない家庭に十分な充電施設を提供することが、より大きな課題になると話す。そうした家庭は800万超に上ると推定される。

ダンディー市は実験場

 現在設置済みの公共充電装置は推定2万5000台ほど。英競争・市場庁(CMA)は今年7月、この数を20年代末までに10倍以上に増やす必要があると警告した。

 国会議員らも今年5月、充電インフラを「必要なペースで」拡充するための方策について「関係省庁が十分な検討を重ねているとは思えない」という厳しい内容の報告書を提出した。

 ダンディー市議会は10年前から車の排ガス問題に取り組んできた。スコットランドは19年、45年までに二酸化炭素の排出量実質ゼロを目指すことで合意した。これは英国全体の目標よりも5年早い。

続きを読む 2/2 充電砂漠を生まないために

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