アップルのクックCEOが就任から10年を迎えた。この10年を同氏は満ち足りた思いで振り返ることができるだろう。だが、これからの任期は、これまでと環境が大きく異なる。グローバル供給網、中国市場、寛容な競争政策、緩い税制などアップルの成長を支えてきたトレンドが姿を変える。

<span class="fontBold">クック氏はジョブズ氏をまねることなくアップルを成長させた</span>(写真=AFP/アフロ)
クック氏はジョブズ氏をまねることなくアップルを成長させた(写真=AFP/アフロ)

 米アップルについて語る時、最上級の字句を使うことなく表現するのは困難だ。同社は時価総額で世界最大(the most valuable)。その額は2.5兆ドル(約280兆円)に及ぶ。このうち80%は、ティム・クック氏がCEO(最高経営責任者)に就任して以降に築き上げた。同氏ほど、株主のために絶対的な価値を生み出したCEOは他にいない。

 クック氏は8月24日、CEO就任10周年を祝った。この10年を同氏は満ち足りた思いで振り返ることができる。

 同氏は、アップルの共同設立者であるスティーブ・ジョブズ氏のまねをしようとするのではなく、ジョブズ氏が創造したものを受け継ぎ、それを磨き上げ大きく育てた。クック氏の成功のほとんどは、アップルのイノベーションの歴史を守り、卓越したブランド力を維持することで成し遂げられた。

 これに加えてクック氏は、オープンでグローバルに展開する資本主義の時代を最大限に利用した。だが、こうした時代は今や過ぎ去ろうとしている。クック氏は少なくともあと5年、CEOの座にとどまる意向だ。アップルの物語の次章が素晴らしいものになるかどうかは、同氏が新たな環境にどう対処するのかにかかっている。

 他の巨大IT(情報技術)企業との比較で見ても、アップルは異例の存在だ。創業は古く(1977年)、事業の主体はハードウエアの販売である。支配権を握っているのは創業者ではなく投資家だ。IT企業の中で最もグローバル化が進んだ一社で、海外売上高の比率は米国のアルファベット、アマゾン・ドット・コム、フェイスブック、マイクロソフトや、中国のアリババ集団、騰訊控股(テンセント)を上回る。

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