2年前、世界的に拡大したアフリカ豚熱の感染が、中国で再び広がっている。中国は新型コロナ感染症の封じ込めで成果を収めたが、アフリカ豚熱対策にはあまり積極的ではない。それどころか、情報を統制するなど、相変わらずの隠蔽体質が見て取れる。

<span class="fontBold">中国の食生活において、豚肉は非常に重要な地位を占める</span>(写真=ロイター/アフロ)
中国の食生活において、豚肉は非常に重要な地位を占める(写真=ロイター/アフロ)

 2年ほど前、中国の高官らが、致死率が高く感染力の強いウイルスが広がり、中国経済の安定と人民の繁栄を脅かしていると警告を発した。

 胡春華(フー・チュンホア)副首相は、この感染の拡大を抑えることは「重要な政治課題である」と発言した。胡副首相は中国共産党中央政治局員でもある。胡副首相は、この感染症の対策に関する自分の指示を「軍事的な命令」として扱うよう求めた。

 これは2019年8月、新型コロナウイルス感染症が確認される数カ月前の話だ。胡副首相が言及したのは別のウイルス──アフリカ豚熱(ASF)の病原ウイルスのことだった。この出血性の病気は、人間は発症しないが、豚にとっては致命的だ。豚肉は中国の食を支える柱の1つであるとともに、何千万人に上る中国農家の生計も支えている。

 中国は、新型コロナとの闘いでは目覚ましい成果を収めているが、アフリカ豚熱の抑え込みには失敗した。「人民に対して行ったことを豚には行えないようだ」。中国養豚企業のある経営幹部はこう語る。

 中国は、1人当たりの豚肉消費量が世界でも指折りの国だ。通常なら、世界の豚の約半数は中国で飼育されている。しかし、18年から始まり、多くの国で豚の命を脅かしてきたアフリカ豚熱のパンゾティック(人間のパンデミックに相当する動物感染症の世界的流行)は、中国における豚の飼育数に甚大な影響を及ぼした。

続きを読む 2/3 「政府は楽観的すぎる」

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