中国の電池メーカーCATLが躍進を続けている。シェアは世界トップ。株価は直近の1年で2.5倍に上昇した。コストと規模が競争力の源だ。鉄とリン酸を使うことでコストを削減、生産能力は2025年に600ギガWhに達する。さらなる成長のカギとして、新開発のナトリウムイオン電池に期待する。

 車載バッテリーの世界最大手、中国の寧徳時代新能源科技(CATL)は7月、新たなテクノロジーを発表した。リチウムではなくナトリウムを使用する電池だ。ナトリウムは豊富かつ安価に入手できる材料で、塩から抽出できる。

<span class="fontBold">CATLを率いる曾毓群氏</span>(写真=ロイター/アフロ)
CATLを率いる曾毓群氏(写真=ロイター/アフロ)

 「イノベーションはCATLのDNAだ。そして、わが社の目覚ましい発展の原動力でもある」。CATLの共同創業者で、現在同社を率いる曾毓群(ロビン・ゼン)氏はこう語る。

 CATLは、海に臨み、お茶の生産で知られる福建省寧徳市に本拠を置く。創業から10年を待たずして、世界最大の市場シェアを誇る電池メーカーに成長した。同社は電池を様々な企業に提供する。大手は米テスラや独BMW。中国の新興電気自動車(EV)メーカー、上海蔚来汽車(NIO)もユーザーだ。

 直近の1年間で株価は160%高騰し、現在の時価総額は1860億ドル(約20兆4000億円)に迫る。この金額は、テスラとトヨタ自動車を除くすべての自動車メーカーを上回る。最大のライバルであるパナソニックと韓国LG化学の時価総額の合計をもしのぐ。

 ゼン氏は1968年、文化大革命の混乱のさなかに貧しい農村で生まれた。そして今、中国インターネット界の巨人、アリババ集団の創業者である馬雲(ジャック・マー)氏に比肩する大富豪となった。米フォーブス誌が発表する世界長者番付に、CATLの関係者が9人ランクイン。世界の上場企業の最高記録に並んだ。

「シェア低下は避けられない」

 中国政府が国内テック企業に対し規制の網を広げる中、CATLはこれを逃れている。EVに対する国内需要の急拡大という大波に乗っているからだ。中国汽車工業協会(CAAM)の8月11日の発表によれば、新エネルギー車(NEV)の国内販売台数は7月、前年同月比164%増の27万1000台に達した。

 だが、この目覚ましい成長スピードを今後も維持するのは困難だろう。この巨大な国内市場は、中国政府の支援に支えられてきた。国内の競合電池メーカーは、CATLの牙城を突き崩すべく追撃姿勢を強めている。米国や欧州の市場では、世界の競合メーカーとのさらに厳しい競争に直面している。

 チャイナ・イーワイ・インスティチュート・オブ・エコノミクス(CYIE)でリサーチ部門を率いるウー・ハイ氏は、CATLのシェア低下は「避けられない」とみる。CYIEはEVにフォーカスする調査会社だ。

 同氏はこう続ける。「CATLがこれまで急成長できたのは、中国市場に十分な事業拡大余地があったからこそだ。加えて、政府が国内企業に手厚い支援を与えてきた。今日、政策支援が縮小されるのに伴い、中国の車載電池市場全体が競争に突入しつつある」

 国軒高科は、リチウムイオン電池の生産を拡大する方針の一環として、安徽省合肥市に陰極材料の工場を建設中だ。同社は昨年、独フォルクスワーゲンから11億ユーロ(約1400億円)の出資を受けている。

続きを読む 2/2 成否を分けるイノベーション

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