米政府のサキ報道官が、新型コロナで新規に入院する人の4人に1人はフロリダ州の患者であると明らかにした。同州は共和党色が強く、地方部ではワクチン接種が進まない。知事はマスク着用の義務化に反対する。この状況を、感染力の強いデルタ株が直撃した。ワクチン接種は増えつつあるが、効果が出るには時間がかかる。

 新型コロナウイルスのデルタ株が急速に広まり、ワクチン接種率が低く行動制限をほとんど設けていない米国の諸州を直撃している。フロリダ州では同ウイルスの感染症に苦しむ患者がこのパンデミック(世界的な大流行)が始まって以来の数となり、医療機関は悲鳴を上げる。

 同州は米国の南東に位置し「サンシャイン・ステート」と呼ばれる。直近の感染急拡大における中心地だ。本紙(英フィナンシャル・タイムズ)のアナリストが米保健福祉省が発表するデータを分析したところ、州内の病院の入院者数は1万2408人に上り、パンデミック発生以来の最高水準に達している。

 州内の集中治療室(ICU)の占有率は、8月第1週の末までに過去最高を記録する見込みだ。

 「私たちはみな疲れ切っている。緊急治療室に回される患者は、定員の上限を超える状態だ。施設内の病床はすべて埋まっている」。フロリダ州ゲインズビルで活動する感染症の専門家、フレデリック・サウスウィック氏はこう語る。病院の中には、緊急を要しない手術を中止したところもあるという。

 他にも苦戦する州が存在する。ルイジアナ州ではICUに収容する新型コロナ患者の数が冬のピーク時を上回った。アーカンソー州とミズーリ州も猛スピードで同様の状態に近づいている。

デルタ株の感染速度は2倍

 これらの州における厳しい状況を見ると、感染力の強いデルタ株がワクチン接種率の低い地域にいかに打撃を与えているかが分かる。米国ではこの夏、2020年と異なり、ウイルスの感染拡大を防ぐのに有効な3種類のワクチンが利用可能だ。ワクチンは、デルタ株に感染し重症化したり、入院せざるを得なくなったりする事態から広く人々を守る力を持つ。

 フロリダ医院協会(FHA)の最高責任者を務めるメアリー・メイヒュー氏は、「デルタ株はワクチンを接種していない人の間で猛威を振るっている」と指摘する。FHAには200を超える医療施設が加盟している。

 フロリダ州における新型コロナ感染者数が1日当たり2000人から1万人に増えるのに、20年夏には60日かかった。だが感染力の強いデルタ株が広がるこの夏は、感染者数が同2000人から1万人に増えるのにわずか30日しか要さなかった、とメイヒュー氏は語る。

 米国の各州におけるワクチン接種のスピードは、有権者が抱く政治信条と大きく関連することが分かっている。共和党支持者は民主党支持者に比べて、マスクの着用やワクチンの接種をしたがらない。大多数の人がワクチン接種を終えた州では新型コロナ感染による新規入院者数がほとんど、あるいは全く増えていない。一方で、接種が進んでいない州の大半でその数が急増している。

 ホワイトハウスのジェン・サキ報道官は8月4日、全米における新規入院者のほぼ4人に1人はフロリダ州の患者であると発言した。

 フロリダ州全体を見ると人口の半分近くがワクチン接種を完了しており、全米の水準に並ぶ。だが農村地域の接種率は著しく低い。加えて、フロリダ州ではこれまでずっと感染対策を取らずにきた。マスクの着用を義務化したことは一度もない。

続きを読む 2/2 フロリダ州知事が感染対策の義務化を阻む

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