中国地方政府が公共事業の資金を賄うべく設立した金融機関(融資平台)が、金融危機の震源となる懸念がある。中国の金融当局は、立て直しの見込みがない融資平台を破綻させたいところ。だが、それが現実となれば債券市場が大混乱する。当局はこのジレンマを解消すべくコントロールを強化している。

 7月初旬に中国の銀行に送付されたある文書が、投資家と地方当局者の間で波紋を起こした。規制当局が発した「文書第15号」と呼ばれる指令書だ。過重な債務を抱えた「融資平台(LGFV)」への融資を禁じるよう求めている。

 融資平台は、建設プロジェクトや公共事業に必要な資金を賄うべく市や省などの地方政府が設立した資金調達機関を指す。これまでのところ、債務不履行(デフォルト)に陥ることは許されていない。

 融資平台は、総額でおよそ48兆7000億元(約830兆円)の債務を抱える。このうち11兆9000億元(約200兆円)を利付債券が占める。

 融資平台は債券の利払いをするため、銀行から定常的に融資を受けている。この信用の安定的な供給が断ち切られれば、経済が大混乱に陥ることは避けられない。「銀行が輸血をしなければ、融資平台はデフォルトの危機に直面する」。ある国内投資家は中国のメディアにこう話す。

 その後、この通達は姿を消し、国営メディアもほとんど言及しなくなった。一部の投資家は「この文書が送付されたのは時期尚早だった。いずれ、これに代わる、より穏健な内容の通達が送付される」とみる。

 その一方で、別の投資家は「銀行は当局の命令をいま実行している」と語る。そして、いずれ融資平台の最初のデフォルトが起き、債券市場が大混乱に陥ることを懸念する。融資平台が発行する債券は市場の約10%を占める。

大手企業が相次ぎデフォルト

 つまり、中国の金融当局はジレンマに直面している。当局は、ずさんな経営の融資平台が資本をいたずらに食い潰す事態を回避し、立て直しの見込みがないものを破綻させる必要がある。ただし、こうした措置を、パニックを引き起こしたり、健全な企業による資本へのアクセスを妨げたりすることなく執行しなければならない。融資平台は、金融当局の決意を試す数多くの試練の一つにすぎない。

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