米バイデン政権の経済政策は、オバマ政権よりもむしろトランプ政権との共通点が多い。オバマ政権まで続いてきた新自由主義と決別し、新ポピュリズムに基づく政策を進めている。ドル安を容認し、巨額の財政出動を行い、FRBにマネタイズを求める。必然的な変化だがリスクも伴う。

ノリエリ・ルービニ氏
ニューヨーク大学スターンビジネススクール教授兼、経済分析を手掛けるRGEモニターの会長。米住宅バブル崩壊や金融危機到来を数年前から予測したことで知られる。

 米国のジョー・バイデン政権が発足して約半年が過ぎた。そろそろ、同政権の経済政策を、ドナルド・トランプ政権やそれ以前の民主党、共和党政権の政策と比べて考えてもよい時期だ。

<span class="fontBold">バイデン大統領(右)はトランプ政権が実行した政策を取り消しているようにみえるが……</span>(写真=AFP/アフロ)
バイデン大統領(右)はトランプ政権が実行した政策を取り消しているようにみえるが……(写真=AFP/アフロ)

 常識に反するようだが、「バイデン政策」は、バイデン氏が副大統領を務めたバラク・オバマ政権の政策との共通点よりトランプ政権との共通点の方が多い。トランプ政権の下で出現した新ポピュリズムが、バイデン政権下で形を整えつつある。ビル・クリントン大統領(当時)からオバマ大統領(同)まで綿々と受け継がれてきた新自由主義の信条から決別したと言える。

 トランプ氏は、ポピュリズムを前面に押し出して当選した。取り残された白人ブルーカラー層に同情してみせたのだ。しかし、就任後はむしろ企業や富裕層を重視する政治に傾いた。法人税率を引き下げて、資本に対する労働の力をさらにそぐ政策を進めた。

 それでも、トランプ政策は本当の意味でのポピュリズム的要素をある程度含んでいた。とりわけ、それまでの数十年間に共和党が取ってきた徹底的な巨大企業優遇策と比べれば、そう評価することができる。

 クリントン政権、ジョージ・W・ブッシュ政権、そしてオバマ政権は、それぞれ独特な面はあったが、最重要経済政策に対する基本姿勢は同じだった。例えば、いずれの政権も貿易の自由化を推進し、ドル高を支持した。ドル高により輸入品が安くなるため、所得や富の格差が拡大しても、労働者階級の購買力を維持できると考えていた。

 過去の政権はまた、米連邦準備理事会(FRB)の独立性を尊重し、物価安定を図るその努力を支持した。財政政策は節度を保ち、景気刺激策(減税や財政出動)に頼るのはほとんどの場合、不況対策としてだった。

新ポピュリズムに移行

 最後に、クリントン、ブッシュ、オバマ政権はいずれも大手テック企業や巨大企業、ウォール街に対して比較的寛容だった。どの大統領もモノとサービスの両分野で規制緩和を進め、民間の技術、金融分野における今日の寡占状態への道を開いた。

 これらの政策は、貿易の自由化や技術の進歩と相まって、企業利益を膨らませ、国民所得における労働の比率を低下させた。これにより格差が拡大した。もうかった企業は、規制緩和で得た利益の一部を(値下げと低インフレを通じて)消費者に還元したため、米国の消費者は確かに恩恵を被った。だが、それだけのことだった。

 クリントン、ブッシュ、オバマ各政権が取り組んだ経済政策はみな基本的に新自由主義にのっとっており、そこにはトリクルダウン理論への暗黙の信頼があった。しかし、トランプ大統領(当時)が登場すると、政策は新ポピュリズム、ナショナリズムの方向に動き始めた。この流れがバイデン政権の下で具体化している。

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