中国中部の河南省鄭州市で記録的豪雨による大洪水が発生、当局は従前の洪水対策の見直しを迫られている。その内容は救助活動のあり方のみならず、黄河の制御システム構築から被害情報の管理・統制にまで及ぶ。地球温暖化に伴う気候変動で被害内容はより深刻化しているだけに、「ニューノーマル」な対応が今後は必要だ。

<span class="fontBold">地球温暖化の影響で、洪水の被害は深刻なものとなった</span>(写真=ロイター/アフロ)
地球温暖化の影響で、洪水の被害は深刻なものとなった(写真=ロイター/アフロ)

 中国中部の河南省で7月に発生した豪雨を受け、中国共産党は、気候変動問題の深刻な脅威への対応の見直しを早急に迫られている。

 悲しみにくれる被災者家族やSNS投稿者からは、トンネルへの浸水や地下鉄の冠水を防げなかったとして、河南省の首都を管轄する鄭州市政府に対する批判が出ている。7月までに確認された死者は99人に上る。

 7月20日に鄭州市を襲った豪雨の雨量は、同市で降る雨量のほぼ8カ月分に相当する。当局は「5000年に1度」の出来事だと主張するが、鄭州市在住のある学者はソーシャルメディアに「組織的な人災が自然災害を悪化させた」と投稿した。「引き金となった自然災害は外的な要因だが、内的要因による人災が起こった」「鄭州市の党幹部を職務怠慢の罪で捜査する必要がある」と指摘する投稿も複数見られた。

 一党独裁国家の中国は、自然災害に対する迅速かつ適切な救援活動を果たしていると誇示する一方、被害を防げなかった過失責任を負う市当局者に対して厳格な処分を科すと強調している。

 中国は、新型コロナウイルスの感染拡大についても、初動を誤ったにもかかわらず、ウイルスをほぼ根絶することができたと自画自賛している。中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席は、大規模な検査、厳格な都市封鎖、迅速な濃厚接触者追跡などの対策は、党の指導力と中国の政治システムの「著しく大きな利点」だと指摘した。

 洪水対策も同様にうまくいくだろうか。中国の最高経済計画機関である国家発展改革委員会は7月26日、地方政府幹部に対して、「決して運頼みにせず、(何もできない)思考停止状態を克服せよ。異常気象警報が発令されたら直ちに地下鉄を閉鎖し、会社や学校を休業・休校にせよ」と促した。

 災害時の緊急対応において、党指導部は多くの場合すぐさま現地を視察する。しかし、鄧小平以来の「最強指導者」として党の実権を掌握する習氏はこの時、国家主席就任後初めてのチベット自治区訪問のさなかにあった。そのため、習氏が軍隊を被災地に派遣し、洪水災害の救援に当たるよう当局に命じるのが遅れたとされる。

過去の洪水対策が効かない

 黄河の甚大な氾濫を防ぐための大規模な治水インフラ計画は、中国共産党の歴代指導部が重視する事業だ。そのため、「中国共産党にとって地球温暖化に伴う気候変動の脅威はやっかいな問題だ」と中国治水政策の専門家である米ペンシルベニア大学のスコット・ムーア氏は指摘する。

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