所得格差の大きい地域ほど新型コロナの死亡率が高いことが、複数の専門家の研究で明らかになりつつある。格差の度合いを示すジニ係数が1%上昇すると新型コロナの死亡率が0.67ポイント上がるとの調査結果もある。各国政府はこうした傾向があることを考慮に入れた上で、コロナ対策を練り直す必要がありそうだ。

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米マイアミでは、ホームレスにワクチン接種する施策も(写真=AP/アフロ)

 世界が新型コロナウイルスのパンデミックに襲われてから17カ月がたった。だがこの病に関しては、まだ分からない問題がたくさんある。例えばこのウイルスの発生源についての詳細は明らかになっていない。そしてもう一つの疑問が、この感染症の死亡率は地域によって大きなばらつきがある点だ。

 なぜ米フロリダ州は、人口当たりの死亡率が全米平均を下回っているのか。同州は、ロックダウン(都市封鎖)などの行動規制が緩和されている期間が他の州よりも長かった。にもかかわらず、感染の広がりが抑えられている。

 今、研究者たちはこの謎を解く手掛かりをつかもうとしている。新型コロナによる死亡率の違いを最も的確に説明できる「魔法の変数」が何であるか、答えを見いだそうとしている。

 新型コロナの死亡率は、医療対策や気候、地理的要因といったものとはほとんど関係がないことが明らかになり始めている。そして、深い関わりを持つのは経済的要因であることが分かってきた。

 また、感染者および死亡者の数と強い相関を持つとされた要因が、必ずしもそうでなかったという事実も解明されつつある。例えば高齢者の方が感染による死亡率が高いのはよく知られている話だが、人口に占める65歳以上の高齢者の割合が28%と、世界平均の9%を大きく上回っている日本の死亡率は、これまでのところ極めて低い。インフルエンザが大流行した地域では、新型コロナのパンデミックが比較的軽微だとする調査・研究に対しては、結果を疑問視する研究者が出始めている。また、ロックダウンの厳しさと、死亡者数に一貫した相関が存在しないことも分かってきた。

ジニ係数との相関が強い

 このように、死亡率の違いを説明しようとする試みがさまざまな研究者によって進められている。これまでは関係あると考えられていなかったが、新型コロナウイルスの死亡率がばらついている理由を説明できる変数を、研究者たちは探し求めている。

 今までの研究で、死亡率と最も強い相関を持つと考えられているのは所得格差だ。所得格差は通常、ジニ係数で計られる。ジニ係数は完全に格差がない状態を0、たった1人がすべての所得を独占している状態を1とし、0から1の数字で表される。

 データサイエンティストのユーヤン・グー氏は最近、41の変数と米国各州の新型コロナ感染による死亡者数の相関を、複数のモデルを用いて分析した。同氏の研究により、どのモデルを用いても相関関係が上位に来る変数は3つしかないことが判明した。「所得格差」「人口密度」「人口当たりの老人福祉施設入居者数」だ。

 世界の状況から判断すると、グー氏の研究は良いポイントを突いているようだ。例えば新型コロナ感染による死亡者数は、経済的な平等の度合いが高いスカンディナビア諸国のほうが、欧州全体よりも少ない。

 これはコロナ禍においてあまり行動規制を課さなかったスウェーデンに関しても言える。ジニ係数が0.29のフランスは、隣国の英国よりも死者がはるかに少ない。英国のジニ係数は0.34である。ニューヨーク州は所得格差が極めて大きく、新型コロナ感染による死亡者数も非常に多い。反対にフロリダ州は、ジニ係数と死亡者数のいずれも突出して高くない。

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