香港の大学は返還後も自由主義思想のとりでであり続けてきた。その立場が危うくなりつつある。2020年に施行された国家安全維持法が学生や教員の自己規制を招き、自由な発言を封じ込めている。大学当局も中央政府の圧力に屈し、民主的考えを持つ教員を排除。本土の大学に近づきつつある。

<span class="fontBold">「逃亡犯条例」に反対する運動に多くの学生が参加した</span>(写真=AP/アフロ)
「逃亡犯条例」に反対する運動に多くの学生が参加した(写真=AP/アフロ)

 香港の大学は夏休みに入っており、キャンパスにはわずかな学生しか残っていない。彼らは陰鬱な心持ちでいる。

 香港大学では7月16日に突然、学生会の事務室が警察の家宅捜索を受けた。香港警察の長官は、学生会幹部の中に香港国家安全維持法(国安法)に違反した者がいる可能性があると説明した。同法は、中国政府が2020年に制定し、香港政府が施行した法律だ。香港ではこの前年、学生が主導するデモが数カ月にわたり続いた。

 英国が香港を中国に返還してから四半世紀、香港の大学は権力に縛られない自由主義のとりでであり続けた。だが今は恐怖に支配されている。

 今回の捜索の表向きの理由は、香港大学学生会が発表した一つの決議だった。その決議は、警官を刺した後に自殺した男性の「犠牲」に対して謝意を表するものだった。香港政府は、このような意思表示は「テロを支持し、促す行為にほかならない」とした。

 学生会は謝罪し、幹部たちは辞任した。しかし当局は、それで矛を収めようとはしなかった。警察は学生会の施設から書類を押収し、一部の元幹部たちが香港から出ることを禁じた。

 学生組織は、19年の抗議活動の先頭に立った。そして彼らは今、中国共産党の標的となっている。運動が行われているさなかに本土の役人が香港にやってきて、大学の学生や教員、住民たちに面談を求め、広範囲に調査を実施した。彼らは、学生組織の資金源や、学生指導者がどのように選ばれているか、学生組織と騒動との関係について尋ねて回った。

続きを読む 2/3 学生、教員、大学も自己規制

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