米国で住宅家賃が徐々に上昇している。これはインフレの先行きを暗示するものなのか、注目が集まる。家賃が着実に上昇を続けるなら、インフレ率が予想以上に長く高止まりすることを示す信号となるかもしれない。新型コロナ対策として、家賃を払えない人に対し立ち退きを猶予してきた。この解除が懸念材料になっている。

 「米サンフランシスコのベイエリアでは、あらゆる指標が、賃貸住宅の家賃が再び上昇に転じたことを示している」。こう指摘するのは、手ごろな価格の適切な住宅を供給すべく同市で活動するHAC(Housing Action Coalition)幹部のトッド・デービッド氏だ。同市では、新型コロナウイルス感染がパンデミック(世界的流行)となる中、家賃が下落していた。

 同氏はこう続ける。「もし住宅供給を大幅に増やすことができなければ、サンフランシスコの賃貸住宅の家賃は1年後には再び史上最高値を更新するだろう。住宅の供給が増加すると示唆する材料はまったくない。家賃は上昇基調にある」

 住居費は眠れる巨人だ。その動向次第で、米国のインフレをめぐる白熱した議論の局面を一気に変える可能性がある。米連邦準備理事会(FRB)の関係者、バイデン政権、民間エコノミストの間で、住居費はインフレの動向を読むための重要な指標として急浮上している。

米国の住居費はじりじり上がっている
●消費者物価指数における「家賃」の動向*
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*全都市消費者が対象。「家賃」の伸び(前年同月比)の平均値
出所:US Bureau of Labor Statistics/Financial Times
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 今年に入ってこれまでのところ、消費者物価指数(CPI)を構成する「家賃」項目の上昇は、中古車価格や航空運賃、エネルギー価格などが高騰しているのと比べて比較的小幅にとどまっている。

 とはいえ、住居費はじりじりと上昇している。6月の上昇率は前年同月比2.6%で、2月の同1.5%に比べて加速した。

 もし住居費がこのまま相対的に抑制された水準にとどまるならば、「インフレはコントロールされている」との見方に説得力を与えるのに一役買うだろう。「価格への圧力は沈静化する」というFRBやホワイトハウスの読みに正統性を与えることになる。

続きを読む 2/3 上昇率はまだ3%に届かないが

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