富裕国だけが淡水化推進

 一部の国の政府はこの問題への取り組みを進めている。イスラエルや湾岸諸国では海水淡水化プラントを利用する。太陽光発電で動き、淡水1m3をわずか50セント(約55円)で生成できる。1m3は小さいボトル3000本分の量だ。

 だが多くの国で事態は悪化している。デモに参加する人々はずさんな管理体制と不正行為が今日の窮状を招いたと訴える。「水を取り巻く仕組みが崩壊しつつある」。イラクで水資源相を務めたハサン・アルジャナビ氏はこう指摘する。「社会はいずれ大きな変化に直面する」

 世界銀行によると、世界全体の地表と地中の水源から得られる淡水は、その圧倒的な割合(約7割)が農業に充てられている。中東と北アフリカではこの割合がさらに高い(約8割)。

 乾燥地帯における農作物の栽培は全て灌漑(かんがい)に依存している。当局者は、農業を支援することで地方からの人口流出を食い止め、食料輸入のために外貨を費やす必要を減らすことができると話す。こうした理由から、例えばエジプトは農業従事者にナイル川からの引水を許可している。金銭の負担は水のくみ出しにかかる費用だけだ。

 このような優遇措置の存在は、地域の農業従事者による水の浪費を長年にわたり助長してきた。それでも政治指導者たちは、人々の支持を獲得し、自らの利益を拡大するため、安価な水を利用したがる。

 世界で最も乾燥した国の一つ、ヨルダンの政府は、ヨルダン渓谷に暮らす有力部族の農業従事者の不満を和らげるのに水を使っている。イランでは、イスファハンの製鋼所で使用する冷却水を確保するためイラン革命防衛隊が河川の流れを変えた。故アクバル・ハシェミ・ラフサンジャニ元大統領は自らのピスタチオ栽培に水を供給するためダムを建設したとさえいわれる。

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