中東と北アフリカで水不足が深刻化している。淡水化技術を利用できるのは湾岸諸国など一部にとどまる。水不足は利権と汚職を生む。為政者は自らの支持を維持・拡大するため、水を利用する。敵対勢力を弱体化する武器に用いることもある。トルコはクルド人への、イランはアラブ人への水供給を抑える。

<span class="fontBold">イエメンの難民キャンプで暮らす少女。熱波の中、ロバで水を運ぶ</span>(写真=AFP/アフロ)
イエメンの難民キャンプで暮らす少女。熱波の中、ロバで水を運ぶ(写真=AFP/アフロ)

 アルジェリアの首都、アルジェには大統領府がそびえ、各国の大使館が立ち並ぶ。この都市の近隣で最近、水道から出る水の勢いが増しているという。だが、この話は、この都市の郊外に住む人にはとても伝えられない。

 気温が上がる季節に入ったにもかかわらず、水道が何日も干上がっているからだ。人々の怒りも沸騰中で、抗議のデモが主要な道路を塞ぎ、鉄道を止めている。「水が止まるなら、他も全て止まる」。抗議に参加する人々が抱く思いを地元のメディアが伝える。

 水不足に苦しむのはアルジェリアだけではない。イランやイラク、スーダン、イエメンでもこの数カ月間、水をめぐる抗議の声が噴出している。イランでは7月16日、デモに参加した2人が銃で撃たれて死亡した。水不足は、中東と北アフリカの他の地域でも社会の混乱を引き起こしている。

 この地域の干ばつは、聖書の時代から続く特徴だ。しかし現在、気候変動のために乾季が長期化している。これまで以上に厳しい熱波が襲うようになり、気温は記録的な上昇を見せている。降雨量は先細りが予想され、一部の地域では急激な減少が見込まれる。

 このため農業従事者は新たな井戸を掘らざるを得ない。これが帯水層を枯渇させ、このままではとり返しのつかない環境破壊を引き起こす恐れがある。中東と北アフリカのほぼ全域で水不足と気温上昇が深刻化し、より悲惨な状況に追い込まれる事態が懸念される。

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