新型コロナ感染者が急増する台湾に対し、中国がフェイクニュースを仕掛けて社会を混乱させようとする動きがある。SNS上の偽情報をテレビなどの大手メディアが取り上げてしまい、信ぴょう性を帯びてしまう動きが後を絶たない。台湾住民のメディアリテラシーを高める教育活動が欠かせないが、浸透するには時間がかかりそうだ。

<span class="fontBold">台湾ではデマにより高齢者のワクチン接種ペースが減速した</span>(写真=ロイター/アフロ)
台湾ではデマにより高齢者のワクチン接種ペースが減速した(写真=ロイター/アフロ)

 わずか1カ月前まで、台湾はどの先進民主主義国と比べても、平穏な状態にあると考えられていた。米調査会社ピュー・リサーチ・センターは6月23日、台湾住民の68%が「コロナ前よりも社会の結束が強まった」と感じている調査結果を発表した。この数値はシンガポールに次ぐ高さで、約16カ月にわたり新型コロナの抑え込みに成功してきた事実を物語るものだ。

 だが今、こうした結束が揺らぎ始めている。ピュー・リサーチ・センターのデータと直接比較できるような調査結果はないが、今や台湾で初めて新型コロナの感染が急増する事態となり、世論を2分する意見の対立が起きている。当局の感染封じ込め策に対する不信が広がっている上、あらゆるデマがはびこり住民の不安が高まっている。

 西側の民主主義国家の大半は、コロナ禍において、意見や立場の相違をめぐる対立・分断への対処に苦慮してきた。米国ではロックダウンに反対する人々がデモを繰り広げ、ドイツではワクチン接種に声高に反対する運動が広がっている。

台湾の「レバノン化」狙う中国

 だが台湾にとって、こうした対立の激化はより一層危険な結果を招く恐れがある。台湾を領土の一部だと主張する中国が、分断に乗じて台湾を取り込もうと身構えているからだ。

 この件に関しては、中国共産党の機関紙、人民日報の姉妹紙でナショナリズムを前面に打ち出している英字タブロイド紙、「Global Times(環球時報)」が2016年に掲載した記事がよく知られている。同紙は「中国は台湾を中東の小国レバノンのように社会を分断し、混乱させようとしている可能性がある」と論じた。

 中国政府が混乱を生じさせるために選んだ「武器」はフェイクニュースだ。

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