米シリコンバレーにあるIT企業の豪華な本社オフィスは、優秀な人材を集めるために不可欠と考えられてきた。だが新型コロナのパンデミックがリモートワークを加速させたことで、その前提が揺らぎ始めている。これからの本社オフィスは小規模化していくと思われるが、一部では本社そのものをなくす動きも見られ始めている。

 「ここはサンフランシスコでも指折りの、働く人の健康に配慮したビルです」。米配車サービス最大手、ウーバー・テクノロジーズでオフィス環境の整備や建物管理の責任者を務めるマイケル・ワコ氏は、新しい本社ビルを案内してくれた際、誇らしげにこう語った。

 自慢できるポイントはたくさんある。社員たちが上る階段が設置されているスペースは木目調で統一されている。階段を上ると日の光あふれるアトリウムに出た。ここはビル内の空気を自然換気する役割を担う空間でもある。会議室や部屋の片隅のあちこちにカウチソファが並び、デスクはほとんど見当たらない。もちろんIT(情報技術)企業にふさわしく、ジュースバーやヨガスタジオもある。

 一つだけ懸念があるとすれば、ウーバーの従業員の多くが引き続き在宅勤務を望み、出社するとしても週に2、3日になるかもしれないということだ。この点について「実際どうなるかは誰にも分からない」とワコ氏も認める。

 ウーバーだけではない。シリコンバレーのどのIT企業も、夏季休暇明けにオフィスを完全再開した際、一体どうなるか思い悩んでいる。シリコンバレーの動向にほかの業界が追随することはよくある。本社問題をどう解決するかについても「IT業界が新たな職場のあり方や働き方の見本になるかもしれない」と、ワーキングスペースのデザインを手掛けるMモーザーアソシエイツのチャールトン・ハットン氏は指摘する。

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