中国の巨大テック企業は昨年来、当局から厳しい締め付けを受けている。だが、テンセントに対する政府の措置は、競合のアリババなどに対する措置と比べて穏やかだ。ソーシャルメディア上の検閲に協力するなど、政府の方針に従う馬化騰CEOの姿勢が影響しているようだ。

 中国のテック大手はこの1年、規制当局から過酷な締め付けを受けてきた。その中にあってテンセント(騰訊控股)と同社CEO(最高経営責任者)の馬化騰(ポニー・マー)氏(49歳)は、ある程度平常通りに事業を運営してきた。

 同社は、市場時価総額が7300億ドル(約81兆円)に達する中国最大のテック企業だ。SNS(交流サイト)やゲームを提供している。同社の創業者である馬氏は中国第2位の富豪となった。

 ネット大手のアリババ集団や、同社傘下の金融会社アント・グループ(螞蟻集団)、出前アプリの美団などが、それぞれの事業や市場の支配力を巡り規制当局から厳しい追及を受ける中、テンセントと馬氏は重大な責任を表立って問われることなく済んできた。

 「テンセントも無傷で追及を逃れることはできないだろう」。同社の音楽事業に対する訴えを水面下で準備している当局の関係者はこう語る。だが、馬氏が目立った行動を取ることなく、政府との関係に細心の注意を払っているため、当局との交渉において同社は良好な立場を保っている。

 テンセントに勤めるある従業員2人は「口を閉じていれば財を築ける」と、中国の起業家のための格言をそろって引用した。中国共産党の江沢民元総書記が広めた言葉だ。

 対照的に、競争相手であるアリババの馬雲(ジャック・マー)氏は、口を開かずにはいられない人物だ。アント・グループは2020年、370億ドル規模の上場を遂げる直前になって規制当局に差し止められた。以後、同氏は公の場からほぼ姿を消した。

 あるテックスタートアップの創業者は、「馬化騰氏は、まさに政府が望むテック企業の経営者だ。目立たず、基本的に政府の計画に沿って動く。馬雲氏とは正反対だ」と語る。

<span class="fontBold">テンセントの馬化騰CEO。「目立たず、基本的に政府の計画に沿って動く」と評される</span>(写真=AP/アフロ)
テンセントの馬化騰CEO。「目立たず、基本的に政府の計画に沿って動く」と評される(写真=AP/アフロ)

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