好景気を背景に、IT企業への投資が盛り上がりを見せていたが、その裏で不正会計問題等も増えている。ITバブルが変調を来せば、これまで見えてこなかった不祥事がさらに表面化するだろうと筆者は警告する。ガバナンス徹底が求められるが、IT業界には「物言う株主」がいないだけに、一般の投資家が目を光らせるしかない。

<span class="fontBold">SBGは、会長兼社長の孫正義氏が意思決定において強い力を持つ</span>(写真=つのだよしお/アフロ)
SBGは、会長兼社長の孫正義氏が意思決定において強い力を持つ(写真=つのだよしお/アフロ)

 好景気だった経済が変調を来し始めると、これまで覆い隠されてきた問題が姿を現し始めるのはよくある話だ。

 20年前にIT(情報技術)バブルが崩壊した際は、米エネルギー企業エンロンと米通信大手ワールドコムで会計不正が明るみに出た。大げさな問題に発展こそしなかったものの、多くの企業でも不正な会計処理や操作が次々と表面化した。米ゼネラル・エレクトリック(GE)や、仏メディア大手のビベンディは、今でも当時の経営トップが残した「負の遺産」に苦しんでいる。

 2008年の世界金融危機直後は、ウォール街で実権を握った人々の「裸の王様」ぶりが白日の下にさらされた。米大手投資銀行のリーマン・ブラザーズやメリルリンチなどが巨額の損失に耐えかねて崩壊することとなったが、そこから浮かび上がったのが、経営陣のとてつもない慢心だった。

 将来後悔することのないよう、今のうちから何かを知っておくことは決して簡単ではない。しかし、投資による失敗を避けたいのであれば、足元でブームを引き起こしている企業の有価証券および経営者の動きにとりわけ注意していく必要がある。例えば、活況を呈している高利回りの債券市場は、与信管理基準が甘くなっており、金融リスクの高い領域の1つに挙げられる。

 ガバナンス(企業統治)の面で最も混乱を生みそうなのも、IT業界だ。市場は新しいテクノロジーがもたらす将来性の高さに熱狂しやすい。こうした雰囲気を少しでも感じ取ろうものなら、投資家たちは舞い上がり、一気に群がり始める。

大胆な投資が生む「副作用」

 新型コロナウイルスがもたらした不況は、世界経済のさまざまな分野に弊害をもたらした。しかし、シリコンバレーとその関連企業に関しては、パンデミックによって勢いづき、大胆な投資へと突き進む現象が起こっている。 その結果、副作用も出始めた。疑わしい会計処理から経営者の傲慢な振る舞いまでさまざまな悪行が、景気の良い時期には見過ごされがちだ。著名投資家のウォーレン・バフェット氏の名言にあるように、「潮が引いて初めて、誰が裸で泳いでいたかが分かる」のだ。

 IT企業に注意すべき2つ目の理由は、リスクの高いベンチャー企業へ積極的に資金供給している点だ。リターンに執着する投資家は、時価総額の高い企業に資金をつぎ込んできたが、そうした企業は将来が約束されているとは、とても言えない。中国配車アプリ最大手の滴滴出行(ディディ)は、累積損失額が130億ドル(約1兆4300億円)に上るにもかかわらず、次に株式を売却する際の評価額が1000億ドル(約11兆円)を超える可能性がある。ベンチャー企業とM&A(合併・買収)することを目的に上場する、特別買収目的会社(SPAC)の急増に伴い、こうした動きは加速している。

 投資先の経営陣の言動に注意しなければならない点も、IT企業に投資する際、非常に重要な問題だろう。