バイデン米政権が大型の経済対策を次々立ち上げようとしている。これがインフレを招くと懸念する声が上がる。ノーベル賞経済学者のスティグリッツ氏は、この懸念をバイデン政権に反対する人々によるまやかしと断じる。経済の不確実性は依然として晴れておらず、経済政策の不足が招くリスクは過剰によるリスクより大きいという。

ジョセフ・スティグリッツ氏
1943年米国生まれ。米アマースト大学卒、67年米マサチューセッツ工科大学で経済博士号取得。95~97年クリントン政権で大統領経済諮問委員会委員長、97~2000年世界銀行のチーフエコノミスト。01年にノーベル経済学賞受賞。現在は米コロンビア大学教授。

 米国と欧州でインフレ率がわずかに上昇しており、これに対して金融市場で懸念が広がっている。米国のジョー・バイデン政権は総額1.9兆ドル(約210兆円)の新型コロナ救済追加経済対策に続き、インフラ整備、雇用創出および家族支援のための政策を相次いで進めようとしている。これらの政策は、経済の過熱を招くリスクがあるのだろうか。

 我々は依然として極めて深刻な不確実性に直面している。これを考慮するなら、経済の過熱を懸念するのは時期尚早だ。

 我々はこれまで、感染症の大流行で経済が落ち込み、そのためサービス部門が集中的に打撃を受け、格差が前例のない水準にまで拡大し、さらに貯蓄率が急上昇する、といった事態を経験したことがない。

 先進国は新型コロナウイルス感染症の拡大を抑え込むことができるのか、それはいつのことになるのかさえ、誰にも分からない。まして、世界全体で収束するのがいつになるかなど、想像もつかない。

 こうした状況では、想定されるリスクを評価すると同時に、あらゆる不測の事態について対応策を用意しておく必要がある。筆者がみるところ、バイデン政権は、十分な経済対策を打たないリスクは対策が過剰になるリスクを上回る、と正しく判断している。

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