ミャンマーで現金不足が深刻化している。クーデターの後、預金の引き出しに上限が設けられた。このため銀行預金を、額面以下の現金と交換する動きが拡大している。外国企業による取引停止や中央銀行の政策など理由は多岐にわたる。金とドルは史上最高値を付けた。

人々は傘だけでなく、椅子やマットを持ち込んで預金引き出しの順番を待つ(写真=ロイター/アフロ)

 ATM(現金自動預払機)に連なる人々の列は、朝早くからできる。夜明け前に並び始める人も少なくない。それぞれがプラスチック製の椅子や腰掛けを持参する。体を横たえるためのマットを持ち込む人もいる。日が高くなれば傘を差したり、日陰に入ったりして順番を待ち続ける。

 今、ミャンマーは現金不足に見舞われている。アウン・サン・スー・チー氏率いる政権を転覆し、国軍が権力を掌握した2月以降、何万という人々が職場を放棄した。銀行は預金の引き出し金額に上限を設けた。このため、人々が毎日、支店に詰めかけるようになっている。

 銀行家や外国の観測筋、ビジネス関係者たちによると、中央銀行は需要を満たす十分な量の現金を銀行に供給していない。国軍の怒りに触れるのを恐れ、本紙(英フィナンシャル・タイムズ)に話を聞かせてくれた人のほとんどが匿名を希望した。人権団体の政治犯支援協会(AAPP)によると、クーデターの後、国軍が拘束した人の数は5400人を超えるという。

 現金が不足する現状を見れば、この国の経済と金融システムが今も脆弱であることは明白だ。ミャンマーではクーデターの直後にゼネストが発生。経済活動は徐々に再開しているものの、十分ではない。

国軍も民主派も恐ろしい

 「私たちは国軍を信用しない。私たちへの信頼を少しも見せることがないからだ」。ヤンゴン在住でライターと医療ボランティアをしている19歳のニッキーさんはこう語る。フルネームは載せないでほしいとのことだ。彼は「だから預金を取り戻さなければいけない」と言う。

 ニッキーさんはここ数日、ミャンマー民間最大手のカンボーザ(KBZ)銀行に持つ家族口座から預金を何度も引き出している。同銀行が、引き出しの上限を1日20万チャット(約1万3000円)に制限しているからだ。

 この問題の深刻さを示す事象の一つが、現金を扱う並行市場の台頭だ。

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