韓国で、反中感情が高まっている。そのため、テレビドラマが2回で打ち切りになる事態も発生した。韓国はその原因を中国側の行動にあるとする。「キムチの起源は中国にある」と示唆したりするからだ。今のところ、こうした世論が韓国の外交に影響してはいない。“キムチ戦争”は冷戦のままにとどめるのが良策だ。

<span class="fontBold">韓国はキムチを、韓国文化の重要な要素と考えている</span>(写真=AFP/アフロ)
韓国はキムチを、韓国文化の重要な要素と考えている(写真=AFP/アフロ)

 悪霊が中世の王朝を滅亡させようとたくらむ空想ドラマなど真剣に受け止めるべきではないと、普通なら思うだろう。だが今年春、韓国のテレビで「朝鮮駆魔師」が放映されると、ソーシャルメディア上で大きな騒動が起こった。

 史実と異なるとの意見が沸騰したのだ。王族たちが悪霊と戦うことが、史実にもとるというのではない。月餅やピータンなど中国の食べ物で客をもてなす設定が間違いだというのだ。企業は相次いでスポンサーを辞退した。このドラマは結局、たった2話放映されただけで打ち切りになった。

 この出来事は、韓国と中国の関係を巡る最近の騒動の一つにすぎない。韓国の人々はここ数カ月の間、国内で放映されるテレビ番組における中国ブランドのプレゼンスが「過剰」であるとして、激しい抗議を繰り返している。主たる舞台はソーシャルメディアだ。俳優や放送局を謝罪に追い込む事例が相次ぐ。

 さらに、中国の国営メディアや外交官、ソーシャルメディア利用者の発言が、火に油を注いでいる。韓国の重要な文化であるキムチやサムゲタン(参鶏湯)、チョゴリなど韓服の発祥の地は実は中国だ、と示唆したのだ。これらの発信に韓国の人々は激高した。

「韓国文化の起源は中国」

 4月には70万人近い韓国市民が、中国文化を紹介するテーマパークやホテルを江原道北東部に建設するプロジェクトの中止を政府に求める嘆願書に署名した。建設反対派の人々は「我々の国土を中国に与えるな」と気炎を上げた。反対運動に直面した(韓国の)不動産デベロッパーはこのプロジェクトを中止するに至った。

 こうした争いは、ナショナリズムの古くから続くぶつかり合いの最新事例と位置づけることができる。韓国はかつて中国帝国の朝貢国であったことや、朝鮮戦争において、北朝鮮の独裁政権を救うべく中国軍が自分たちを打ち負かした歴史を痛いほど認識している。

 その一方で、現在の韓国について、近代的な民主国家となったことや、その豊かさを誇りに思っている。多くの韓国人が中国のことを、貧しく、独裁主義で、韓国のように洗練されていない国だと見下しているのだ。そして同時に、中国が擁する巨大市場が韓国経済にとって極めて重要であることを腹立たしく思っている。

 これとは対照的に中国は、時に、韓国を傲慢な取るに足らない小国と見なす。朝鮮文化の起源は中国にあると考えているのだ。時には自分の立場を思い知らせる必要があるとも考えている。

 ソウルにある世宗大学のリ・ムンキ氏は次のように話す。「韓国人は自分たちの文化が独自のもので、中国に依存したことなどないと考えている。一方、中国人は、韓国は中国のおかげで文化を得たと考える」

続きを読む 2/2 中国と北朝鮮の好感度は同じ

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