仮想通貨の取引で世界有数の規模を誇る韓国に転機が訪れている。規制当局が取引所に対し、取引参加者に実名の口座を持たせなければならないという規制を導入したからだ。この条件を満たせる取引所は一握りにとどまり、市場の勢いが鈍る懸念がある。ただし、若者の投資意欲は盛んだ。

韓国における仮想通貨の取引高は、1日200億ドルを超える(写真=AP/アフロ)

 韓国に200ほどある暗号資産(仮想通貨)取引所の多くが今、「存亡の危機」に直面している。韓国は、世界最大の仮想通貨市場の一角を成す。この巨大市場に大掛かりな規制のメスが入り、取引所は認可条件を満たすのに苦戦している。

 韓国の取引所が合法的な取引プラットフォームとして営業の認可を得るには、地域の銀行と提携し、顧客の実名口座を開設しなければならない。だが銀行側は、デジタル通貨を使ったマネーロンダリング(資金洗浄)の責任を負わされる可能性を懸念している。

 韓国金融委員会(FSC)が定める期限は9月24日。それまでに要件を満たせそうな取引所は一握りしかない。この状況は、世界の動きを反映している。これまでに数千もの仮想通貨取引所が誕生した。世界の規制当局がこれらへの締め付けを強めており、取引所はそのプレッシャーの下にある。

4大取引所による寡占状態

 ある取引所の経営幹部はこう語る。「世界の仮想通貨市場に携わる多くの人が、規制によって韓国のような大手4社による寡占状態に至るシナリオを恐れている」

 韓国の仮想通貨取引は、アップビット、ビッサム、コルビット、コインワンという4大取引所による寡占状態にある。これらは新韓銀行、NH農協銀行、Kバンクなどと提携しており、仮想通貨取引用の実名口座を顧客に提供できるため、今回の規制を乗り切ることができるとみられる。アップビットとビッサムは金融委員会への登録準備を進めていると語る。

 小規模な取引所は、新たな規制は最大手の取引所に有利で自分たちを犠牲にするものだと主張する。「我々は存続の危機にひんしている。規制に従おうとしても、銀行は我々に実名口座を提供したがらない」。10万人の顧客を抱える韓国第5の取引所、Foblgateを率いるイ・チョルイ氏はこう語る。

 「認可を得られなかった取引所がグレーゾーンに放置されることになれば、もっと多くの問題が生じるだろう。我々は海外に事業拠点を移す必要が出てくるかもしれない」

 取引所が危機感を募らせる一方、専門家の中には当局による管理を強化する必要があると説く向きもある。韓国の取引所の多くは投資家の保護や取引の透明性をめぐる措置を欠いている、というのが理由だ。

 韓国資本市場研究所の研究者、ファン・セイウン氏は「市場に存在する取引プラットフォームの数が多すぎる。短期的には混乱を招くことになっても、市場を整理するには政府への登録制度が必要だ」と指摘する。

続きを読む 2/2 仮想通貨に消極的な金融当局

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