中国物流市場が活況を呈している。大手の一角を占める京東物流は5月、今年2番目に大規模な上場を果たした。ただし、この市場は激戦区でもある。老舗の順豊エクスプレスやアリババ系の菜鳥網絡との争いは激しい。3社は三様のビジネスモデルを擁して勝ち残りをかける。勝敗のカギを握るのはコストだ。

 中国ネット通販大手、京東集団(JDドットコム)の創設者である劉強東氏は2019年、配送員に対して基本給を撤廃すると表明した。同社はこの前の年に28億元の赤字を計上。赤字は12年連続となった。配送員が受け取るのは配達件数に応じた歩合給だけになる。劉氏は経費を削減しなければ、2年以内に経営破綻すると警告した。

 それから2年がたった今、京東集団の配送部門である京東物流(JDロジスティクス)は、破綻するどころか絶好調だ。中国のネット通販市場が活況を呈していることが背景にある。親会社・京東集団の第1四半期の収入は、前年同期比39%増加して2030億元(約3兆5000億円)に達した。

 新興のライバル企業、拼多多(ピンドゥオドゥオ)は5月26日、同期の収入が220億元(約3800億円)に大きく拡大したと発表した。同社は、京東物流に配送を委託している。

 中国国家郵政局は、物流企業の取扱高は今年1000億件を超え、18年の水準から倍増すると予測する。物流サービスへの支出は今年16兆元(約280兆円)に達し、25年までには19兆元(約330兆円)を突破するとみられる。そうなれば、中国は世界最大の物流市場になる。

 また物流企業はこれまでのところ、大手テック企業と異なり、政府による厳しい締め付けを受けていない。中国共産党はアリババ集団や騰訊控股(テンセント)などの大手テック企業の影響力拡大を恐れ、厳重な監視の目を注いでいる。

自前の統合物流網で差異化

 国内外の投資家が物流産業に膨大な資金を投入してきた。この産業が関わる取引に携わってきた複数の弁護士がこう話す。京東物流は紅杉資本中国基金(セコイア・キャピタル・チャイナ)や、高瓴資本(ヒルハウス・キャピタル)などの大手プライベートエクイティグループなどを魅了してきた。

 19万人に上る京東物流のスタッフは死に物狂いで注文を処理し、配送作業をこなしている。同社を巡る金融市場の関心も同じように熱気にあふれている。京東物流は5月21日、香港株式市場で32億ドル(約3500億円)の資金を調達。今年に入って2番目に大きなIPO(新規株式公開)となった。取引開始は5月28日の予定である

*=京東物流株は5月28日、予定通りに取引を開始。初値は46.05香港ドル。公開価格を14%上回った
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