ロシア政府は小躍りしている。ロシアの情報宣伝を担う放送局「RT」の責任者マルガリータ・シモニャン氏は、ルカシェンコ大統領が行った海賊行為の技を称賛した。「ベラルーシをうらやむ日が来るとは想像もしなかったが、今はねたましい。あの大統領は見事にやってのけた」

 ロシアのテレビ各局は、ハマスが爆破を予告したというルカシェンコ大統領の嘘を広めている。ハマスはパレスチナのイスラム原理主義組織で、EUがテロ組織に指定している。

 ロシアのセルゲイ・ラブロフ外相は、「ロシアは困っているベラルーシを見捨てはしない。隣国であり、戦略的同盟国であるベラルーシの救援にいつでも駆けつけるつもりだ。我々は歴史と精神的価値観を共有している」と表明し、ルカシェンコ大統領への擁護を正当化した。

 ただし、ベラルーシとロシアの政権が何より共有しているのは、自分たちを権力の座から追い落としかねない民衆蜂起への恐怖だ。ベラルーシでは20年夏、大統領への抗議活動が全国に拡大した。かつてソビエト連邦を構成していた他の国と同様、「カラー革命」が起こり、独裁政権が再び倒されるかと思われた。

 ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は、この抗議活動は容認しがたいとして介入。経済支援を提供するとともに、ルカシェンコ政権の支配力が揺らいだ場合には同政権軍を支援すべく治安部隊幹部を派遣すると確約した。また、ベラルーシの情宣機関の仕事を必要に応じて一部肩代わりできるよう、ロシアの専門家チームも派遣した。

 これらの支援の目的は、ルカシェンコ大統領の権力強化ではない。プーチン大統領はルカシェンコ大統領を信用してはいない。プーチン大統領はベラルーシを、西側と対峙するのに不可欠の戦場と認識しており、この機に同国への支配力を確保しようとしたのだ。

再びロシアに接近

 ルカシェンコ大統領はかねてロシアと西側を争わせ、両者に揺さぶりをかけてうまく経済的利益を引き出してきた。プーチン大統領は2年前、ロシアとベラルーシの連合の強化に乗り出した。新帝国を自分が支配しようとしたのだ。

この記事は会員登録で続きをご覧いただけます

残り1346文字 / 全文3687文字

日経ビジネス電子版有料会員になると…

特集、人気コラムなどすべてのコンテンツが読み放題

ウェビナー【日経ビジネスLIVE】にも参加し放題

日経ビジネス最新号、10年分のバックナンバーが読み放題

日経ビジネス2021年6月7日号 84~85ページより目次

この記事はシリーズ「世界鳥瞰」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。