中国財政省が6割出資する不良債権処理会社、中国華融資産管理の信用不安問題がくすぶり続けている。220億ドルもの海外債務を抱える企業をデフォルトできるのか、中国の金融システムが試されているといってもよい。当局が今後、中国企業の財務健全性に注意するよう投資家に働きかけるのは必至で、企業も情報開示が必要だ。

 このところ、海外アナリストたちは中国華融資産管理のことを、その英文社名「Huarong」をもじって「Hua-wrong(華融は誤った、の意)」と呼ぶ。この中国最大の不良債権受け皿会社に絶えず付きまとう問題は、極めて深刻だ。同社は主に、経営破綻や経営不振で財務内容が悪化した企業の債券「ディストレス債」を引き受けることを主事業としている。

 今年1月、収賄罪で逮捕されていた同社の元会長、頼小民氏の死刑が執行された。同社は3月以降、決算発表を何度も延期している。香港市場に上場されている株式は取引が停止されている。そして同社が発行する永久債(編集部注:償還期限を定めない債券)は額面1ドル当たり65セントを下回る価格で取引されている。

<span class="fontBold">中国華融資産管理は、何度も決算発表を延期している</span>(写真=ロイター/アフロ)
中国華融資産管理は、何度も決算発表を延期している(写真=ロイター/アフロ)

 中国華融資産管理は、平常通り事業を継続しており、債券の利払い能力はあると説明している。決算先送りの理由として、「関連取引の未了」を理由に挙げている。だがその「取引」の詳細は依然明らかにされていない。

 同社が現在陥っている困難な状況は、金融市場におけるリスク低減を目指す中国当局に困難な問題を突きつける。中国企業に無差別に巨額の資金をつぎ込んできた投資家に対しても、警鐘を鳴らしているといえよう。

市場規律導入に向けた試金石

 中国では1999年、大手金融機関が抱え込んだ巨額の不良債権を管理するため、4つの「不良債権受け皿機関」が設立された。中国華融資産管理はそのうちの1社だ。同社は今や証券取引のみならずプライベートエクイティ、シャドーバンキング(影の銀行)と、あらゆる金融取引を手掛けるまでになったが、依然として財政省が過半数株主となっている。同社が発行するドル建て債は海外の有力投資家の間で非常に人気が高く、その発行残高は220億ドル(約2兆4000億円)に上る。投資家たちは中国華融が手掛ける事業規模と政府との結びつきから、政府支援は得られやすいと判断している。

 だが2018年に頼小民氏が逮捕されたことで、同社の資産価値に対する疑念が広がった。中国政府も財務面で支援を続ける意思があるかどうか不透明な状況だ。

 確かに中国政府はこの5年間、企業に対して負債比率を引き下げるよう働きかけ、国営企業が相次いで債務不履行(デフォルト)に陥る事態も容認してきた。だが、中国華融資産管理の資産規模は1.7兆元(約28.8兆円)にも達する。中国政府がこれほど規模が大きく、かつ金融システム的にも重要な役割を担う企業を破綻させたことはない。

 「この事例は当局が金融セクターに市場規律を導入できるかどうかの試金石となるだろう」。米スタンフォード大学ロースクールで中国のコーポレート・ガバナンスについて研究しているカーティス・ミルハウプト教授は話す。そしてこう続ける。「私自身は当局が中国華融資産管理を破綻させるとは思わない。だが債権者と株主に損失を強いる債務再編に踏み切る可能性は大きい」

 政府が支援に乗り出さない、救済対象を限定する、といった情報が出始めたことから、米格付け大手のフィッチ・レーティングスおよびムーディーズは、中国華融資産管理の格付けを引き下げた。

続きを読む 2/2 米国は中国企業の監視を強化

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