世界的な選手やクラブに巨額の資金を投じてきた中国のサッカービジネスが曲がり角を迎えている。習近平政権が各産業への締め付けを強める中、サッカークラブを所有する大企業の放漫経営にもメスが入った。政府はサッカー大国を目指すが、若手が育たず、代表チームは帰化選手頼りなのが現状だ。

<span class="fontBold">シュートを決めようとする上海申花の選手</span>(写真=ロイター/アフロ)
シュートを決めようとする上海申花の選手(写真=ロイター/アフロ)

 サッカーをするには蒸し暑い夜だった。5月10日、中国スーパーリーグ(CSL)に所属する上海申花の試合は、新型コロナ関連の規制のため、上海から車で3時間近く離れた中立地で開催された。この不便さに加えて、月曜午後6時というキックオフ時間だったにもかかわらず、数千人のサポーターが、愛する地元チームの試合を見るため来場した。相手は河北省のチームだ。

 観戦に訪れた中年のビジネスパーソン、A・G・ワンさんは「私たちにとってこれは一種の信仰です」と語った。

 ファンの目から見れば明らかなファウルを審判が見逃すたびに、「シャービー」と叫ぶ声が競技場に鳴り響いた。一般家庭向けにはとても訳せないような言葉だ。後半のアディショナルタイムに上海申花の選手が完璧なフリーキックをゴールネットに突き刺し同点に追いつくと、大歓声が上がった。

 観衆が示す情熱は、世界中のどの国のファンにもおなじみのものだろう。ただ、その情熱が描かれるキャンバスは、紛れもなく中国的だ。CSLは金銭的な問題と政治の干渉に悩まされている。

 中国は経済の巨人に見えることがある。指導者たちは壮大な目標を掲げ、お気に入りの産業に資金を注ぎ込む。この方針が才能ある忠実な人材と組み合わされば、目標を達成するための極めて強力な手法となる。

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日経ビジネス2021年5月24日号 86~87ページより目次

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