各国が温暖化ガス削減目標を明らかにしている。しかし、それらを横並びで比較するのは難しい。いずれも自国に都合の良い基準年を選んだりしているからだ。1人当たり排出量という同じ基準で比較すると、2030年の米国の排出量は12.1トンで、中国の9.8トンを上回る。

出所:CAIT/FT calculations/Financial Times
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 ジョー・バイデン米大統領は自国の温暖化ガスの排出量を2030年までに半減させると発表した。この公約を達成しても、30年時点における人口1人当たりの排出量は、同じく30年までの削減目標を掲げている他の排出大国を上回る。

 パリ協定は、調印した国々が排出量の目標を定めるのに、独自のパラメーターを使用することを認めている。国別の削減目標(NDC=国が決定する貢献)は法的拘束力を持つ。

 こうした取り決めがあるため、発展途上国は今後の経済成長を加味した形で削減目標を設定できる。だが共通の規範がないため、各国の取り組みを比較するのは難しい。

 中国とインドは排出量の削減目標を、総量ではなくGDP当たりの排出量とリンクさせている。

 起点とする基準年も、国によって異なる。このため、各国が掲げる30年までの削減目標は、削減率の値は素晴らしいものに見えるかもしれないが、実際には比較できるものではない。

 ほとんどの国は削減目標を、ピーク時の排出量からの削減率として設定している。例えば、科学者らでつくる非政府組織(NGO)のクライメート・アクション・トラッカーによれば、日本の温暖化ガスの排出量は13年、二酸化炭素換算で14億トンを上回り、過去最高を記録した。東京電力福島第1原子力発電所事故の影響で各地の原発の稼働が一時停止され、化石燃料への依存度が高まった後の年を選んだわけだ。

続きを読む 2/3 排出ピーク時を基準年に選ぶ

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