中国・新疆ウイグル自治区での人権侵害に対する国際的な批判を受け、中国が反撃に出ている。批判派に制裁、新疆綿の使用を控えた企業へのボイコットを呼びかけ、米中外交トップ会談では激しく反論した。これらは国内向けポーズの面もあるが、中国と欧米との間で当面、非難の応酬が続きそうだ。

楊潔篪氏(左から2人目)は18分にわたって反論を続けた(写真=代表撮影/ロイター/アフロ)

 2008年の北京オリンピックが開幕する数カ月前、チベットで起きた示威行動に中国は激しい弾圧を加えた。海外メディアはこれに注目、世界の人々が中国に対し抗議の声を上げた。

 このとき中国の学者たちは、「3つの受難」というコンセプトを広めた。3つのうち2つは、中国がそれまで受けてきた苦難(列強に「打ちのめされ」、貧困により「飢えさせられた」)を指す。3つ目は今日直面する、世界から「非難される」苦難だ。習近平(シー・ジンピン)国家主席はこの第3の概念を援用し、中国は「国際的な言論戦」に直面していると論じた。

 新疆ウイグル自治区の問題ほど、中国が世界から激しい非難を浴びた事柄はかつてなかった。同自治区で暮らすウイグル人は大半がイスラム教徒。そのうち約100万人が、宗教に対して敬虔(けいけん)すぎる、あるいは海外にいる親戚に話をした、といった理由で強制収容されている。民主主義諸国のメディアはそろって、この状況を異様な人権侵害と報じる。

 中国共産党はこの非難を押し返し、欧米の「言論覇権」と彼らが呼ぶものを打ち破ろうとしている。共産党は過去10年の間、公式メディアやシンクタンク、外交官、治安組織など大量の人材を動員するとともに、何十億ドルもの資金を注ぎ込んで「3番目の受難」への対処に取り組んできた。

激しい対応は国内向けアピール

 ウイグル問題に関する最近のプロパガンダの中で目につく特徴は、中国を批判する人々への執拗な攻撃だ。中国政府は今年3月、これらの人々に制裁を科した。中国攻撃を促した欧州や北米の議員、研究者、シンクタンクに対し、入国禁止や中国企業との取引の禁止などの措置を講じた。

 また、新疆綿の生産現場でウイグル人が強制労働させられている可能性があると認めた欧米企業に対し、中国の公的組織がネット上で、ナショナリスティックなボイコット運動をあおり立てた。

 中国当局はその後も、対抗措置を繰り出し続けている。国内のウイグル人に命じて、海外にいる反政府的な親戚に口を閉ざすよう求める動画を作らせた。ウイグル人への弾圧を調査する著名研究者アドリアン・ツェンツ氏を訴えると発表。英BBCの特派員ジョン・サドワース氏に圧力をかけて国外に去らせた。

 海外からの批判に対抗する動きは、個人攻撃の色彩を帯びてきている。国営通信社の新華社は4月、ツェンツ氏を「反中国勢力の操り人形」と呼んだ。新疆発展研究センターは「虚言を弄するアドリアン・ツェンツの新疆についての誤信と真実」と題する報告書を発表した。

 中国共産党系メディア環球時報は、強制労働について報告したオーストラリアの研究者ビッキー・シュー(許秀中)氏を、オーストラリア国内で暮らす中国人を「危険にさらす」機運をかき立てたとして糾弾した。環球時報の記事は、シュー氏は「欧米の反中国勢力に魅せられている」という中国人学生の言葉を引用している。

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