IMFが発表した最新の世界経済成長率見通しは大幅に上振れたが、途上国の状況は回復から程遠い。「持てる国」だけ経済回復する状況を放置してはならず、医療支援、経済支援を惜しみなく途上国に施すべきだ。コロナ禍から一息ついた国々も、新たな変異株の出現や過度の財政支出に伴う反動などに注意する必要がある。

オンラインで開催された、IMF・世銀春季会合の様子(写真=AFP/アフロ)

 国際通貨基金(IMF)と世界銀行の春季会合にて、2020年の世界経済成長率が想像以上に上振れた結果になることが判明した。わずか半年前の見通しから、経済は大きく回復する傾向にある。

 しかし、世界経済全体の回復に目を奪われると、世界の人々を取り巻く現在の状況が覆い隠されてしまう。恵まれない状況にある国々やそこで暮らす人々は、極めて緩慢なスピードの経済回復に苦しめられている。その上、途上国はワクチンの世界的な供給の遅れにより、期待をくじかれている。世界は今、2つに分断されているといってもよい。今後、回復から取り残された国々は立ち行かなくなるかもしれない。

 IMFが発表した最新の世界経済見通しの際立った特徴は、19~22年の世界の1人当たり国内総生産(GDP)の累積成長率見通しが、20年1月時点の予測値よりも3ポイントしか下回っていない点だ。6.5ポイント下回った昨年、4ポイント下回ると予測されている今年と比べても、かなりいい数字だ。世界経済が予想を上回る力強さと順調さで回復していることを示している。

貧困層が増加する

 だが、さらに衝撃的なのは格差が拡大している点だ。先進国は、同期間の累積成長率見通しが20年1月時点の予測よりも1ポイント下回るだけなのに対し、新興国は4.3ポイント(中国を除くと5.8ポイント)、低所得発展途上国(LIDC)は6.5ポイントも下回る予測となっている。持てる国は取り戻せる。しかし、持てない国は、わずかな持ち分すら失ってしまう。これが実態なのだ。

 今年1月、世銀は、新型コロナウイルスの影響で極度の貧困層がこの1年間で1億1900万人から1億2400万人増えたことを明らかにした。こうした暗い見通しを踏まえると、今の状況がすぐに好転するとは思えない。

 先進国と中国は経済的にほとんど無傷で危機から抜け出そうとしている。とりわけ米国経済は従前の予測をやや上回る勢いの回復を見せている。一方で新興国と発展途上国は大規模かつ長期的な打撃を被っている──。これが、IMFの経済予測が示しているポイントだ。もっとも、世界の人口の3分の2が途上国で暮らしていることを忘れてはならないだろう。

 07~09年の世界金融危機の後は、現在とは全く逆の現象が起こった。これは金融危機が高所得国で始まったことも関係している。09年の中国の回復スピードが非常に速かったことも影響しているかもしれない。

 しかし、今回のコロナ危機に対処し、うまく立ち回ることができたのは結果的に高所得国と他のごく少数の国(中国など)だけだった。豊かな国は並外れた財政支出と金融緩和政策を打ち出すことで経済や社会への打撃を和らげることができた。そして猛スピードでワクチンを開発、生産、供給することができた。

 IMFの財政モニター によると「過去12カ月で、各国は計16兆ドル(約1712兆円)の財政支援を発表した」という。だが、この大部分は先進国で実施されたものだ。19~20年の1年間で先進国の財政赤字はGDP比で8.8%増の11.7%となった。21年もなお10.4%と高水準だ。

 一方、19~20年の間に新興国の財政赤字はGDP比で5.1%増えて9.8%となった。しかし、低所得発展途上国の財政赤字はGDP比でわずか1.6%増の5.5%にとどまる。IMFの財政モニターはこう強調する。「先進国と一部の新興国の財政赤字の増加は、歳出増や歳入減がほぼ同じ程度で影響している。一方で、多くの新興国とほとんどの低所得発展途上国の財政赤字は、主に景気低迷に伴う歳入の落ち込みによってもたらされている」

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