「米国は戻ってきた」。バイデン大統領はこう強調した。しかし、それは本当だろうか。その試金石となるかもしれないのがウクライナと台湾での対応だ。米国は支援するというが、その実行性は定かでない。ロシアと中国はバイデン政権の本気度を試すかもしれない。

ウクライナと台湾で同時に危機が起こる事態を懸念する向きもある(写真=ロイター/アフロ)

 「米国は戻ってきた」。米大統領選に勝利したジョー・バイデン氏はこう宣言した。

 だがアフガニスタンからは立ち去る。バイデン大統領は4月14日、同国に残る全ての米軍を撤退させると発表した。期限は2021年9月11日。象徴的な意味を持つこの日、20年間におよんだ戦争が終結する*1

*1=2001年9月11日に米ニューヨークで同時多発テロが起こり、これがアフガン戦争のきっかけとなった

 世界と再び関わっていくという米政府のレトリックと、世界の出来事に背を向け続けている現実。この2つの間にへだたりが生じつつあるのではないか──状況を見守る世界の人々は疑問に思うだろう。

 バイデン大統領は「それには当たらない」と断言する。米国はアフガニスタンでテロ対策の目標を達成し、これから「次の20年に向けた戦いに取り組む。過去の20年にとらわれることはない」というのがその主張だ。

 問題となるのは、世界の人々がどう見るかである。危険なのは、今回のアフガン撤退を米国外の人々が、ベトナム戦争と同様の失敗と見ることだ。1975年、サイゴン(当時。現ホーチミン)が陥落し、南ベトナム政府は北ベトナムに降伏した。この時と同様に、米軍の撤退が、アフガニスタンの首都カブールが反政府武装勢力タリバンの手に落ちるきっかけになるかもしれない。

曖昧戦略は変えるべきか

 米国のライバルである大国、特にロシアと中国は調子づき、バイデン政権の決意を試そうと揺さぶりをかける懸念がある。明らかな火種はウクライナと台湾だ。

 ロシア政府はこの数週間、14年にクリミア半島を併合して以来、最大規模となる部隊をウクライナとの国境地帯に結集させている。中国は4月下旬、かつてない数の軍用機を台湾の防空識別圏(ADIZ)に侵入させた。ロシアも中国も、軍事力を誇示するとともに挑発的な言葉を並べた。

 バイデン大統領もロシアと中国に対し、対立を辞さない物言いを返している。ロシアのウラジーミル・プーチン大統領については「人殺し」との認識を示した。またバイデン政権は、新疆における中国の振る舞いをジェノサイド(民族大量虐殺)であると認定した。

 米国は最近、ロシアと中国の当局者に対して制裁を科す一方で、米政府関係者が台湾当局関係者と接触する際の制限を緩和している。

 アジアと欧州が直面する戦略的状況は、一つの重要な点で類似している。米国は台湾とウクライナに対する強力な支持を表明しているが、どちらも米国から明確な安全の保障を得てはいない。米国の台湾政策は「戦略的曖昧さ」に基づく。米国が台湾を防衛すべく戦う可能性が高いことをにおわせているが、確固たる約束はしていない。同様に、ロシアが全面的なウクライナ侵略に動いた場合にどう対応するかについて、米国が詳しく述べたことは一度もない。

 台湾とウクライナは何千マイルも離れており、それぞれの敵も異なるが、この2つの膠着状態にはつながりが感じられる。

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