巨大IT企業の租税回避を念頭に置いた、法人税の国際最低税率の導入をイエレン米財務長官が提案した。一方、欧州がこだわるのは、IT企業が収益を上げている当該国への納税を増やす課税権の再配分だ。最低税率と課税権の再配分、どちらにおいても納得のゆく妥協点を見いだすのは難しく、交渉は難航が予想される。

<span class="fontBold">イエレン米財務長官は、法人税の国際最低税率を提案した</span>(写真=AFP/アフロ)
イエレン米財務長官は、法人税の国際最低税率を提案した(写真=AFP/アフロ)

 法人税制は国際経済政策を考えるにあたり、最も悩ましい問題の一つだ。米国のジョー・バイデン大統領の財務長官で米連邦準備理事会(FRB)前議長のジャネット・イエレン氏はこの問題について熟考を重ね、一つの結論を出した。4月5日にシカゴ国際問題評議会で行った演説は世界中の政策当局者の関心を呼んだ。彼女は大企業に対する国際的な最低法人税率の設定を各国に呼びかけたのだ。

 イエレン氏によれば、こうした課税は「より公平な競争環境を実現させることによって世界経済の繁栄を確実にし、30年にわたる減税競争に終止符を打つ」ものになるという。

 世界共通の最低税率の導入という考えは、カリブ海、欧州の一部、さらに遠隔の租税回避地(タックスヘイブン)の怒りを買っている。だが他の主要国の多くは米国がトランプ時代の厄介な単独主義に別れを告げ、税制面でも国際協調路線に回帰する姿勢をはっきりさせたことを歓迎するだろう。

 この10年、企業の行き過ぎた課税回避行動に強い批判が浴びせられてきた。グローバリゼーションの急速な進展に伴い、多国籍企業はタックスヘイブンを利用することで、二重課税に脅かされるどころか二重非課税となる状況を享受するに至っている。

 各国の税法の違いに乗ずれば、課税所得を削減したり、場合によってはゼロにしたりすることも可能だ。無形資産の増大がそうした企業の行動を容易にした。無形資産は建物や機械といった設備に比べて、地域間の利益移転を実現しやすい。

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