音楽配信サービスのアルゴリズムが男性アーティストを多く推奨してしまうのは、過去データを基に学習するからだ。自分と似た境遇の者を選ぶことが有色人種や女性の排除につながるなど、意図しない差別は様々な分野にある。我々はダイバーシティを進めるにあたり、「無意識にバイアスを再生産する仕組み」に対処していかなければならない。

音楽配信サービスでは男性アーティストがより聴かれる現象が起こる(写真=ロイター/アフロ)

 性差別はいつもはっきりと目に見えるものばかりとは限らない。例えば、音楽業界では「#MeToo(私も)」運動により、男性の歌手、ミュージシャン、プロデューサーなどによるセクハラが暴露されたが、もっと分かりにくい形での女性差別も存在してきた。

 例えば音楽配信サービスにおけるユーザーの視聴パターンを見てみよう。2020年に「スポティファイ」で最もよく聴かれたアーティストのトップ10に入っている女性アーティストは2人だけだった。女性のトップは7位のビリー・アイリッシュだ。これは一見差別ではないように思われるが、背景には見逃せない問題がある。

 欧州のコンピューター科学者のチームが音楽配信サービスのアルゴリズムについて調査をしている。オランダのユトレヒト大学 のクリスティーン・バウアー准教授、スペインのポンペウ・ファブラ大学のシャビエル・セーラ教授とアンドレス・フェラーロ氏は、ある音楽配信サービスの公開情報を使って33万人のユーザーの聴取記録を分析した。それによれば、ユーザーが聴いた楽曲に占める女性アーティストの割合は25%にすぎなかった。学術系ニュースサイト「ザ・カンバセーション」に投稿された彼らの調査結果によれば「平均すると一番初めに推奨される曲は男性アーティストのものだった。その後の6曲も男性、7曲目か8曲目になってようやく女性の曲を聴ける」のだという。

 個人の音楽の嗜好はさまざまな方法で決まるが、私たちが音楽を聴いている方法自体に内在する固有のバイアスが問題になっている。音楽配信サービスは、過去にどんな曲を聴いたかに基づいて新たな曲を推奨する。過去に男性歌手の曲を多く聴いていれば、それが繰り返しフィードバックされるうちに、さらに男性の割合が高くなっていく。ほとんどのリスナーはこのカラクリに気付かない。

続きを読む 2/3 アルゴリズム調整で差別を是正

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