スエズ運河で大型コンテナ船が座礁したため、数百隻のタンカーや船舶が足止めをくった。ロシアはこれを商機とみて、北極海の海運ルートや石油・ガスパイプラインの優位性をアピールする。「エネルギー供給源の多様化と、代替輸送手段は昔も今もグローバル経済に有益だ」

<span class="fontBold">ロシアの原子力砕氷船「Arktika」。北極海産の液化天然ガスを運ぶ</span>(写真=AFP/アフロ)
ロシアの原子力砕氷船「Arktika」。北極海産の液化天然ガスを運ぶ(写真=AFP/アフロ)

 エジプトのスエズ運河で3月23日、コンテナ船が座礁する事故が起きた。これにより、何百隻もの船舶やタンカーが同運河の周辺で足止めされた。ロシアはこれを機に欧州諸国に対し、ロシアおよびその周辺を経由する輸送手段が持つメリットの売り込みに乗り出している。

 その一つはパイプラインだ。運河と異なり、事故による遮断のリスクが小さい。もう一つは、ロシアの北極海沿岸を通る海運ルートだ。スエズ運河に代わるアジア向けの海路を長期的に提供できる。北極海ルートでは船舶の幅や喫水を気にする必要はない。

 2020年に北極海ルートを通じて運ばれた貨物は3300万トンだった。一方、スエズ運河を通る貨物の量は1日で300万トンを上回る。

 同運河は、座礁事故の後1週間にわたって通航不能だったが、3月29日に再開した。「それでも、貿易量が増え続けているのを考慮すれば、貨物輸送のための短距離代替ルートが登場するのは不可避だ」。ロシアのエネルギー省はこう指摘する。

 「北極海ルートは、貨物の輸送量を拡大させる高いポテンシャルを秘めている。アジア・欧州間の物資輸送に要する時間を大幅に短縮できる」(同省)

 同ルートが1年を通じて航行できるようになるのは25~30年と見込まれる。気候リスクも依然として存在する。だがロシアの国営原子力会社ロスアトムは、スエズ運河での事故を受けて同ルートの需要は高まると予想する。同社はこのルートを管轄している。

シベリア鉄道の予約が増加

 ロシアのインタファクス通信によると、ロスアトムの北極開発部門のウラジーミル・パノフ特別代表は「北極海ルートを開発することで現行の物流ルートが抱えるリスクを回避することができる。これにより世界貿易は一層持続可能なものになる。中国や日本、韓国などのアジア諸国が今後長期的な戦略を策定するにあたって、今回のスエズ運河の事故を考慮に入れるのは間違いない」と指摘する。

 モスクワの証券会社アトンの石油・ガスアナリスト、アナ・ブトゥコ氏は「今回の事態はロシア企業・経済にとって追い風だ。それには多くの理由がある。例えば現在の状況は長期的に見て、『スエズ運河の代替ルートとして北極海ルートを利用すべきだ』という論調を強力に後押しするだろう」と語る。

 ロシアの鉄道貨物輸送会社トランスコンテナは「鉄道貨物輸送の需要はロシア全域で拡大している。ここ数日の間にシベリア横断鉄道の予約が増加した」とメディアに語った。

 ロシア政府は北極海ルートだけでなく、石油とガスを滞りなくスムーズに提供できることの売り込みにも抜かりがない。

続きを読む 2/2 グローバル経済に欠かせない多様なソース

この記事は会員登録で続きをご覧いただけます

残り1197文字 / 全文2787文字

日経ビジネス電子版有料会員になると…

人気コラムなどすべてのコンテンツが読み放題

オリジナル動画が見放題、ウェビナー参加し放題

日経ビジネス最新号、10年分のバックナンバーが読み放題

この記事はシリーズ「世界鳥瞰」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。