独フォルクスワーゲンの米国法人が3月末に、社名を「ボルツワーゲン」に変更すると発表した。しかし、その後すぐ、エープリルフールの勇み足だったと釈明した。狙いは新型電気自動車の販促にあったという。排ガス不正の痛手から立ち直ろうと努力を続けている企業としては、お粗末なキャンペーンだった。

<span class="fontBold">ボルツワーゲンになってもロゴは「VW」</span>(写真=ロイター/アフロ)
ボルツワーゲンになってもロゴは「VW」(写真=ロイター/アフロ)

 独フォルクスワーゲン(Volkswagen)が、エープリルフールのジョークを3月中に発表してしまったようだ。同社は、消費者や投資家に誤解を抱かせたことについて謝罪を余儀なくされた。

 同社は3月末に、米国法人の社名を「ボルツワーゲン(Voltswagen)」*1 に変更すると発表した。これは、今後次々と市場投入する予定の電気自動車(EV)の販促戦略だった。

*1=4文字目の「k」が「t」になっている。「Volt」は電圧の単位「ボルト」を意味し、電気自動車を示唆する

 複数の国際メディアや競合企業の取締役が、この発表を真面目なものと受け取った。さらに、米ウェドブッシュ証券の金融アナリストまでもが、この社名変更は「フォルクスワーゲンが今後EVブランドに本腰を入れ、EV化の努力を惜しまないとの意思を明確に示すものである」と評価した。

 フォルクスワーゲンのADR(米国預託証券)は29~30日に16%値を上げたが、同社がこの発表は真実ではないと認めた31日、5%反落した。

 フォルクスワーゲンは謝罪の中で、「フォルクスワーゲン・オブ・アメリカは、EVに対する当社の積極的な姿勢と『ID.4』の米国発売に注目を──ウインクしながら──集めるための販促キャンペーンを計画し、実施しました」と説明した。

 謝罪はさらに「その意図は、この国の業界にとって重要な問題に対する意識を喚起することにありました。発表が一部の方々を困惑させたかもしれないことは遺憾に存じます」と続く。

 同社は本紙(英フィナンシャル・タイムズ)に対し、株価を変動させることは「キャンペーンの目的ではなかったし、今もその狙いはない」と語る。米国の規制当局である証券取引委員会は、この件で調査を実施するかどうかについてコメントを拒否した。

不誠実のレッテルから5年

 フォルクスワーゲンはこの5年間、「ディーゼルゲート(ディーゼル車の排ガス不正)事件」で負った「不誠実な企業」という汚名を返上しようと努力してきた。同社は5年前、排ガス検査を不正にパスした自動車を数百万台販売したのみならず、規制当局の調査に対して不正を隠蔽しようとした。そのような企業が取り組むキャンペーンとして、今回のやり方は普通ではない。

 フォルクスワーゲンは3月26日、排ガス不正が発覚した当時に社長を務めていたマルティン・ヴィンターコーン氏と、傘下にある独アウディの社長だったルペルト・シュタートラー氏に対して、この不正が生んだ損害の賠償を請求すると発表したばかりだ。

 EVを巡る今回の騒動では、この排ガス不正問題がすぐに引き合いに出された。

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