政治の対立とビジネス関係の強化が並行して進む姿が欧州に見られる。ロシアが2014年にウクライナ領クリミア半島を併合して以来、ドイツとの政治関係は落ち込んだままだ。しかし、ビジネスに目を向けると、ロシア市場に新規参入するドイツ企業が相次ぎ、既存企業も投資を拡大している。

独ロ貿易は原油価格に連動
●ドイツの対ロシア貿易
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出所:Refinitiv Datastream/national statistics/
The Economist
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 ドイツは、1970年代に当時の西ドイツが「東方政策」を取りデタント(緊張緩和)を進めて以来、ロシアとの対立より関与を選んできた。しかし、両国の政治関係は現在かなり低調だ。ロシア反体制派指導者のアレクセイ・ナワリヌイ氏をロシアの連邦保安局が毒殺しようとしたとされる事件が契機だった。同氏はこの事件のあと、治療のためドイツに運ばれた。

 貿易も同様に低調だ。ロシアの対独貿易額は昨年、450億ユーロに落ち込んだ。ロシアが2014年にウクライナ領クリミア半島を併合、同国東部における同国軍と親ロシア派武装勢力との紛争に関与したため、制裁を科せられたことが背景にある。ロシアとドイツの貿易額は、この紛争が起こる前の12年には800億ユーロだった。

 ドイツは、07年にはロシアにとって最大の貿易相手国だった。現在は2位に転落。1位の中国との間には大きな差がある。ロシアと中国のモノの貿易額は昨年、1040億ドルだった。

 しかしよく見てみると、ドイツとロシアのビジネス関係は依然として緊密だ。最近の貿易額の減少は、ロシア通貨ルーブルの下落と石油やガスの価格低下に負うところが大きい。ロシアは石油・ガスを欧州に輸出している。

 ドイツの対ロ輸出はウクライナ危機のため落ち込んだあと、過去6年間安定している。ドイツからロシアへの対外直接投資額は経済制裁を科された後の15年、35億ユーロに拡大した。18年には38億ユーロに達している。ロシアに進出しているドイツ企業は約4000社で、ロシアで暮らす1億4500万人の消費者に向けて商品を生産している。

ロシアへの新規参入相次ぐ

 ロシアにおけるプレゼンスでドイツの右に出る国は欧州にない。ドイツ企業の多くはロシアからの撤退を考えてはいない。それどころか、新たに進出する企業が増える可能性がある。

 ドイツ企業にとってロシアは十分な規模を持つ市場だ。同時に、安価な労働力に恵まれている。旧ソ連が数学・科学に力を入れたおかげでスキルの高い労働者もいる。特にITは有望だ。

 ロシアで活動するドイツ商工会議所では、会員数が昨年10%超増加し約1000社に達した。この中には、既にロシアに進出していた企業もある。独ロ間の緊張が高まる中で、会議所の支援を受けようと入会した。ただし、多くはロシア市場に新たに参入した新顔だ。

続きを読む 2/2 中国企業の台頭を懸念

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