米テック大手によるターゲティング広告は果たして有効か。今こそ考えるべき時だ。筆者の元に、まるでネット荒らしのように広告が届く。ユーザー情報の分析を生かしているというがお粗末だ。イーベイやエアビーアンドビーが広告を停止しても大きな影響はなかったという。

フェイスブックはターゲティング広告を擁護するキャンペーンを展開する(写真=ロイター/アフロ)

 筆者がインターネットにアクセスするたびに、英文校正アプリを開発したスタートアップ「グラマリー」の広告が表示される。これがうるさくてかなわない。こんな状況が1年以上続いている。ウクライナに拠点を置く同社が提供するのは、シンプルな英語の文章を書くのに悪戦苦闘している人向けのツールだ。

 この広告を50回目に目にした時には、ターゲティング広告ではなくアルゴリズムを使ったネット荒らしのように感じられた。

 ユーザーの興味・関心に合わせて配信するターゲティング広告は、“汚染”をまき散らす害があるものの、テック最大手の一部を潤す燃料となっている。個人情報の保護を訴える人々は、こうした広告を禁止するよう要求する。

 米フェイスブックはこうした状況に危機感を募らせ、ターゲティング広告はユーザーが「お気に入りのビジネス」を探し出すための手段であると擁護するキャンペーンに取り組んでいる。

 だが、縁起でもない葬儀プランのオンライン広告に追いかけられている50代の同僚は、フェイスブックのこの主張に同意しないだろう。ターゲティング広告の技術がそれほど効果的なら、なぜオンライン広告はこうもお粗末なのだろうか。

個人データの価値はいかほど

 データは「新しい石油」だと考えられている。極めて貴重な資源であるため、何十億ドル(数千億円)もの市場価値があるという。それゆえ企業はマーケティング予算を(編集部注:テレビなどの既存メディアから)オンラインにシフトしている。レーザー光線のように的を絞り込んだ広告が打てるといううたい文句につられてのことだ。

 デジタル広告の2大巨頭である米アルファベット(米グーグルの親会社)とフェイスブックは昨年の売上高について、それぞれ1825億ドル(約20兆円)、860億ドル(約9兆4000億円)と発表した。これらの金額は、貪欲に個人情報を集め、それをターゲティング広告に仕立て直すことで稼ぎ出したものだ。

 筆者が籍を置く英フィナンシャル・タイムズのLexコラムグループは、個人情報がどれほどの価値を持つのか幾つかの方法で試算してみた。

 フェイスブックの年間売上高を、同社のプラットフォームの少なくとも1つを利用しているユーザーの数で割ると、ユーザー1人当たりの価値は約26ドル(約2800円)となる。だがこの方法は過去を説明しているにすぎず、将来獲得できるであろう売上高を考慮していない。

 より適切な方法は、同社の時価総額をユーザー数で割ることかもしれない。この計算によって得られる200ドル(約2万2000円)超という金額の方が、フェイスブックのユーザー1人当たりの価値により近いと思われる。

 だが、この「200ドル」が著しい過大評価で、ターゲティング広告はテック企業が主張するほど有効ではないとしたらどうだろう。テック企業が実施するユーザー分析を見ると、収集したデータに基づくリサーチの信頼性はさほど高いようには思えない。

 フェイスブックの分析によれば、筆者はラグビー、家族、グリーティングカード、ゴシックファッションに関心がある。だが家族を別にすれば、どれもまったく的外れだ。それに、家族に関心がない人などいるだろうか。グリーティングカードがすごく好きな人も、私が知る限り一人もいない。

 私はフェイスブックを10年以上使い続けてきた。よってフェイスブックは何年にもわたって、ネット上での私の行動を追跡し情報をかき集める機会があったはずだ。であるにもかかわらず、その情報から導き出した結果はでたらめでおおむね不正確だ。もし私が広告主なら、お金を返してほしいと思うだろう。

続きを読む 2/2 広告主も問題意識を持て

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