バイデン政権が定めた気候変動対策を、この10年でいかに進めるかが今後の米国の針路を左右するだろう。米国はイノベーションが得意な国だが、2050年までの脱炭素達成には、大規模な変革を起こす必要がある。国際社会の場でも削減に向けて野心的な目標を掲げるなど、影響力を与える存在であり続けなければならない。

<span class="fontBold">テキサス州では、寒波により数多くの発電設備が停止した</span>(写真=AFP/アフロ)
テキサス州では、寒波により数多くの発電設備が停止した(写真=AFP/アフロ)

 何でも超大型な米テキサス州だが、今回同州を襲った大寒波は、米国が直面するエネルギー問題がいかに大きいかを浮き彫りにした。この寒波にとどまらず米国全土で異常気象の発生が続いており、もはやこの事態が気候変動の兆しであることは誰の目にも明らかだ。

 テキサス州の電力インフラは崩壊してしまった。同州の再生可能エネルギーの比率が高すぎるからだと言う者もあるが、問題はそういうことではない。風力発電所に限らず、ガス火力発電所や原子力発電所にも被害が出ている。加えて同州の発電容量は小さい上に送電網も貧弱なため、他の地域から電力を融通することもできない。

 こうしたテキサス州の現状は、米国ではクリーンエネルギーの導入に対応するのみならず、かつ信頼度の高い送電網の構築が求められていることを浮き彫りにしている。

 米政権は、今後2~3カ月のうちに、エネルギー政策の抜本的な改革案を連邦議会に提出する予定だ。ジョー・バイデン大統領は 、2035年までに発電部門の温暖化ガス排出ゼロにして、50年までに「カーボンニュートラル(炭素中立)」な経済を実現しようとしている。米国は世界第2位の二酸化炭素(CO2)排出国であるが、同時に気候変動政策や技術に関する知見を有し、世界をリードする潜在力もある。これから起こるワシントンでの動きは、今後10年間、もしかしたらその先に至るまでの米国の針路を定めるものになるだろう。

共和党の反対がネックに

 残された時間はあまりない。バイデン氏またはその次の大統領に、これほど大々的な政策の見直しを実施する機会は二度と巡ってはこないだろう。19年の化石燃料とセメント生産にかかる世界の温室効果ガス排出量は、09年に比べて16%増加した。米国の50年のカーボンニュートラル目標は、世界の平均気温上昇を産業革命以前の水準から2度以内に抑えるという国際社会の目標に沿ったものだが、実現は至難の業だ。

 世界でカーボンニュートラルを達成するには、10年間にわたって毎年7.6%の排出削減が必要だ。これは、20年に新型コロナウイルス感染症の流行に伴って生じた石油・石炭需要の低下を上回る規模の削減量だ。米国の行動が30年まで遅れると目標実現のコストはほぼ倍増し、全く達成できなくなる可能性が高い。

 ただし、まだ希望はある。共和党がほぼすべての気候変動対策に反対している中、有権者は気候変動問題への関心を強めている。有権者の3分の2は連邦政府の対策が不十分だと考えており、これには若年層の共和党支持者も多く含まれている。

 化石燃料業界のロビー活動の影響力は依然として大きいものの、資産運用会社が企業にバイデン氏が掲げるカーボンニュートラルに対応した戦略立案を促していることもあってか、共和党への大口資金提供企業の多くも積極的な温暖化対策を望んでいる。

続きを読む 2/2 気候変動で影響力持つ存在に

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