パウエル米FRB議長は景気刺激策に伴うインフレの懸念を否定し、金融緩和政策を続けると発表した。緩和継続自体は問題ないとしても、2022年まで緩和を続けるといった明確すぎる予告が資産の高騰を呼んでいる。FRBはテーパータントラムの再来を恐れるが、今は思い切った出口戦略を見つけ出すべきだ。

パウエル議長の発言は、データ重視と言いながら、恣意的に判断すると聞こえる(写真=AFP/アフロ)

 「疑わしければ、一層のリスクを取れ」。米連邦準備理事会(FRB)のジェイ・パウエル議長が最近発しているメッセージは、こう言っているように聞こえる。

 米国のバイデン政権が提案する1.9兆ドル(約200兆円)に及ぶ景気刺激策はインフレの引き金になるのではないか──それゆえFRBは遠からず、現在の金融緩和から引き締めに転じざるを得なくなる。このような臆測が2月上旬、盛んに取り沙汰された。

 しかしパウエル議長は10日、ニューヨーク経済クラブで行った講演の中で、その可能性を明確に否定した。逆に強調したのは、経済が「完全雇用」に達し、インフレ率がある程度の期間2%以上で推移するまで、FRBは「忍耐強い緩和」を維持する必要がある、ということだった。

 パウエル議長はまた、この2つの条件のどちらも近いうちには実現しそうにないと語った。平たく言うならば、今後かなりの期間、金利は実質ゼロで、インフレなど気にしなくていい、ということだ。金融政策を変更する前には、何カ月かではなく、何年も考える、というわけだ。

政策転換の予告は投機呼ぶ

 パウエル議長の意見は間違っているのだろうか。間違っている、と筆者は考える。それは、極端な緩和政策や超低金利全般の考え方に筆者が反対しているからではない。2008年の金融危機に臨んで、不況のリスクを避けるべくFRBが量的緩和政策を採用したのは正しかった。新型コロナウイルス感染症に襲われた20年に緩和を維持したことも間違っていない。

 現在の金利はもう少し高い方が適切だと筆者は考えるが、現行の低いインフレ率を鑑みれば、今のFRBの姿勢はおおむね正当化され得る。20年1月の消費者物価指数(コアCPI)は、2カ月連続で前月比変化なしだった。

 筆者が不安視するのは、FRBが発信している将来の政策を示唆する情報だ。過去数世代のFRB理事たちは、将来の政策について過度に明確な発信をするのは愚かなことだと考えていた。そのような情報は自らの手を縛るか、市場に甘えを生むか、あるいはその両方を招きかねないからだ。

 ところがこの10年の間にFRBの理事たちは、将来の経済データにどう対応するのか、その枠組みを提示するようになった。これにより予測可能性が高まり、市場に衝撃が及びにくくなるのを期待してのことだ。

 この用心は理にかなったものだった。しかし今、FRBはこのいわゆる「フォワードガイダンス」を危険とも思える新たな水準にまで高めてしまった。

この記事は会員登録で続きをご覧いただけます

残り2210文字 / 全文3454文字

日経ビジネス電子版有料会員になると…

人気コラムなどすべてのコンテンツが読み放題

オリジナル動画が見放題、ウェビナー参加し放題

日経ビジネス最新号、9年分のバックナンバーが読み放題

この記事はシリーズ「世界鳥瞰」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。